リツエアクベバ

satomies’s diary

美意識のパワー

実家に行った。母と話した。

昨年、母が急に弱った。いろいろなことに対しての気力と集中力が落ちた。食がすすまなくなり、痩せた。昼間、眠る時間が長くなった。急に歩く速度が遅くなった。

89歳だ、弱るのも仕方がない。外出の機会が減った。コロナのせいだ。こうして90代を迎えるのだろう。今後の対応など、イメージを持とうと思った。

ところがどっこい。急に復活した。昼寝もないし、歩く速度も戻った。会話にさまざまな関心が増えた。要するに「戻った」。

今日、実家に行き。コロナも落ちついてきたので、こじゃれた店にランチに行った。スペイン料理にスペインのビールを昼間から飲み、きゃっきゃとしゃべった。

「ねえ、なんで?」
なんで急に退化したのが、なんだか復活してるんだ? わたしは、これが89かと思っていろいろ覚悟した。なんなんだ?いったい。

「なんか、イヤになっちゃったのよ」
同世代の友人たちが、愚痴ばかりの老人になってきたんだそうだ。底なしの愚痴をあの人からもこの人からも受け止めていて。
「なんか、こうしちゃいられない、みたいな気持ちになったの」

で、毎朝「今日は◯月×日何曜日、今日も楽しく生きます」と、毎日宣言して起きるのだそうだ。そして、顔を洗って化粧をして新聞を読む。

「あのね。新しいチークを買ったの」

そう言って、それを見せてくれた。たった2000円かそこらなのだけれど、とても気に入った色で。あがるのだそうだ、気持ちが。

「こうしちゃいられない」みたいな気持ちは、それは美意識だよね、と。
その美意識は、一度退化したような体を揺り起こすパワーがあるのかと。
母というより、人生の先を行く人の気持ちの流れの体現は、わたしに大きな影響を与えたような気がした。

わたしも、強く美しく、これからの人生を生きたい。