リツエアクベバ

satomies’s diary

退院後

日記

23日金曜日

少し動くと苦しい。胸のあたりにヤバい感というか。連動して酸素濃度がすぐ下がる。リビングにずっと座っている。夜、這うようにベッドに入り、動き過ぎたと後悔する。

頻繁に酸素濃度を計る。80台が出るとひたすら深呼吸をして数字を上げる。深呼吸でなんとかなる。

夕食は「自宅療養者用配食」、ワタミの宅食という冷凍食品を食べる。配食セットにあったインスタント味噌汁をそえる。息子が用意して、息子が片付けてくれる。
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リビングにずっと座っているわたしに、息子がずっとしゃべり続ける。このうるささも、またしあわせ。

帰宅後すぐにシャワー浴びたが、夜風呂に入る。ずっと入っていたいと思うような「冷たさ」を、自分の体に感じる。寒さや寒気とちがう、「冷たい」。

24日土曜日

のろのろと昼近くまでゴロゴロする。12時近くに最初のごはん。「自宅療養者用配食」のパンと野菜ジュース、それと市販のカップスープ。

体が冷たいので仕舞い込んだ長袖のヒートテックを出す。冷え知らずで薄着日常、家の中でとっくに半袖で動いていた自分にとって「変な感じ」。

車を二週間動かしてないなと思う。エンジンをかけに行く。問題なくかかるが、なんとなくそのまま座ってる。シートは暖かい。エンジン切って家に入ると息子が心配していた。トイレ入ってたタイミングなので、わたしが車にいったのを知らず。家のなかを探していた。ごめん。

早めの夕飯は宅食。冷凍庫にあった小松菜でスープをつくってそえる。美味い。息子が片付けてくれる。

宅食は、ワタミの宅食。美味しくない。美味しいのだけど、美味しくない。どんな献立のものも全部同じ味。共通の「和風料理の素」をかけた感じ。でも消費しなきゃ終わらないよと、これを毎日食べ続けた息子が言う。

25日日曜日

「玉ねぎ じゃがいも ベーコン」を圧力鍋に入れてコンソメいれて「具沢山スープ」をつくる。美味い。12時近くの最初のご飯。それとパン。デザートに冷凍のブルーベリー。「おかあさんの作ったスープ」に二人が喜ぶ。

ちょっと動くと酸素の数値が下がる。ストローを数センチで切って口にくわえて呼吸をする。常に深呼吸をするようなことを狙ったもの。効果はある。ストローくわえて動く変なオバハン。おもしろいので自撮りして友達に送る。
友達はみんな、わたしがなにしても喜ぶ、「死ぬ死ぬ詐欺」。

息子の「療養期間」が昨日で終わったので、買い物に行ってもらう。牛乳、卵、ヨーグルト、冷凍の唐揚げなど。娘が唐揚げ唐揚げうるさかったので。

夕食は宅食。冷凍の唐揚げと味噌汁をそえる。味噌汁は、小松菜と卵。娘が唐揚げに喜ぶ。卵一個そのまま入った味噌汁はボリュームある。

26日月曜日

冷凍庫の宅食に終わりが見えてきて、本来入っていた食材が見える。
玉ねぎ、じゃがいもでスープを作り、冷凍のソーセージを入れる。

今日から息子が仕事復帰。テレワーク。息子の上司に「母親が挨拶したいと言ってる」と言ってくれと、息子に言う。いや、息子の上司はうちの家庭が壊れていく様を息子から聞き続ける。ご心配をおかけして申し訳なかったくらいは言いたい。相手のポジションは「課長」。小学生の子がいる40代。

zoomに入るか?というので即答で「いやだ」と言う。初対面でやつれたオバハンの映像とか、こっちが地獄。電話で話す。「ご心配をおかけしました」で始まり。いい感じのひとでありがたい。調子に乗って「聞きたいことある?」的なことを丁寧に言うと、病棟の中のことを聞かれる。いかにスタッフによくしてもらったかの話をする。医療従事者応援の花火とかの馬鹿馬鹿しさを痛感する、と答える。ああ、取材とか出てくる病棟の話はみんなそんな感じですね。やっぱりそうなんだな、とかそんな会話になる。

とにかく、ご心配をおかけした。だから直接ご挨拶をしたかった。大人の年齢の人間の職場に親が出るなどおかしなことだし、もう二度と出ない。
だから、せっかくの機会なので言わせてほしい。

不器用な子なので「打てば響く」とか「カンやその場のセンス」には期待できないと思う。でももうおわかりと思いますが非常に真面目な子です。今後ともよろしくお願いします。

夫に「上司に挨拶したい」という話をしたら「親が出たら向こうが緊張する」と繰り返す。いや、zoomで言ってくる時点でそれはないと思うし、「きっとおとうさんは、そういうの自分が緊張するんだよ」と息子とこそこそ話す。息子はいろいろなシチュエーションでのわたしを見て育っているので、「かーちゃんのコミュ力」に信頼があり「上司に挨拶」言われても、特に抵抗なかったとのこと。

昼食にパスタ。玉ねぎとツナを炒めて朝のスープの残りを投入。美味い。
写真を夫に送る、夫羨ましがる。この程度はもう作れるよ、待ってると伝える。

夕食は、最後の宅食。冷凍庫にあった赤魚で寿司屋の味噌汁のような味噌汁。冷凍の唐揚げ。
宅食残2。これはいつかわたしが消費しよう。

短いストローなど投げ捨てるほど、「動いても酸素濃度の数値が落ちなくなる」。パルスオキシメーターの数値を指を突き出して息子に見せる。ものすごく安心した顔をする。心配かけたね。

動けるが、動く体感は相変わらず変。あなたは仕事が始まったのだから、気にせず仕事をしなさいと言って、皿洗いの片付けなどから彼を解放する。
無理しないように、休みながら動く。

元気で、その元気をわたしが持て余し気味だった娘が、夜「しんどい」と言い始める。横になれる場所をつくり、夜はいっしょに寝る。体温や数値には問題なし。食欲も問題なし。

27日火曜日

カレースープにベーコンエッグの朝ごはん。玉ねぎとじゃがいもの在庫で作り続けるスープの「味変」に、カレー味というスターを投入。美味い。

昼飯は温かい蕎麦。冷凍庫にあった挽肉と小松菜と片栗粉であんを作る。息子が蕎麦見て感激する。

電話が苦しくなくなったので、母とゆっくり電話で話す。看護師さんとの別れの話で、やはり泣く。

母が言う。「感謝に大騒ぎするのは、それはあの子の人柄。看護ではなく、看護師本人を見てるのはあの子の個性。回復を周囲が喜ぶのはあの子が作り出す世界」と、姉が言っていたと言う。へー、とか思う。

夫の退院が決まる、明日。主治医から話があったとのこと「マイクごしで」。とうとう主治医と対面をせず、入院を終えることに。入院日数は二週間。

帰って何が食べたいかと聞くと「トマトソースのパスタ」と言う。了解、ぜんぜん作れる。おっけー。

ネットスーパーで買い物だな、と思ったら、amazonが近所のスーパーと提携していたのでそれを利用。卵やパン、冷凍鶏胸肉2キロ、冷凍豚コマ1キロ、豚コマパック、あとトマトソースのパスタに使う茄子。
それに加えて、スーパーの弁当を頼んで夕食にしようと物色。
あ、寿司だ。と思う。「寿司食べたいか?」聞くとふたりが歓声をあげる。夫に「あなたいないが寿司食っていいか?」聞くと、こどもたちに頑張った褒美だ、食わせろと返ってくる。

夕飯は、油揚とエノキと玉ねぎの味噌汁。豚コマを炒めて甘辛味をつけて、サニーレタス入れてマヨネーズ。照り焼きハンバーガーの中身みたいなもの。と、寿司。
息子が焼いた肉おかずを見て、こんなものでも崩れ落ちそうなほど感激する、あと寿司も美味かった。

メインを作れるほどの回復ではないかも、思って豚コマくらいしか買わなかったが。この程度で感激されてよかったと思う。ひとりで自炊しようにも、買い物に出てはいけない。食に不自由な生活をさせたなと思う。

昨日「しんどい」言った娘は、やはり午後から「しんどい」言うのでリビングに横になれる場所を作る。うつ伏せになってドヤ顔するのがかわいい。「コロナとの戦い方はうつ伏せ寝」。この子の中に看護師さんが生きてると思う。

看護師さんは娘に対して「名前にさん」「ちぃちゃん」「ちっち」と、人によって呼び方が違った。生まれて初めての「ちっち」呼びがいたく気に入ったらしく、わたしにも「ちっち」呼びを要求するが、わたしがそのことをすぐ忘れてやっぱり「ちぃちゃん」と呼んでしまう。

娘の事業所が娘の在宅作業品を持ってきてくれることになった。会いたくないからポストに入れて、チャイム鳴らしてという。「会いたくないから」言ったくせに、やっぱり出てしまう。職員さんが気持ちいっぱいの顔でわたしに「おかえりなさい」と言う。胸がいっぱいになる、「死ぬ死ぬ詐欺」。