リツエアクベバ

satomies’s diary

たーちゃん

ずいぶん前からこのあたりをのっそりとうろうろしている猫がいる。まあびっくりするほど太っている。
道端にいてそばを通るとにゃあと鳴く。おはようとかこんにちはとか挨拶をする。にゃあと鳴くが寄ってくることはなく、近づくと逃げる。

耳の先が切られている。花びら猫とか地域猫とか呼ばれる猫のしるし。捕まえられて不妊手術を受けて、また野良に戻された猫。このあたりではこの猫一匹だけだ。

ごくたまに鍵尻尾の黒猫を見かけるが、ごくたまにしか見ない。もうどこかで死んだのかと思う頃、ひょっこりと現れて庭を歩いていたりする。ごめんね、ぷっちゃんはもう死んだんだよと時々声をかける。よくこの猫とはぎゃおーぎゃおーとサッシの向こうとこちら側でやりあっていたなと思う。

この黒猫を見ないなと思っていたら、花びら耳のでぶ猫がのそりのそりと庭を歩くようになった。呼んだらやってきたので、飯食ってくか?と聞く。にゃあと鳴くので骨壺前に供えているちょっとお高い小袋のキャットフードをやった。食う食うすまないな食うぜとむしゃむしゃと食う。
そうか、じゃお供えはそのくらいにしてちゃんと食ってけとキャットフードを出してくる。封を切ってない、捨てることができなかったキャットフードを出してきてやるとむしゃむしゃと食う。
でっぷりと太っているから飯場はもってるだろうに、お客にきてくれてありがとうと思う。

飯をくったらのったりとウッドデッキに寝そべる。夫が、おーそこにいろ、しばらく時々来い、と声をかける。タイワンリスが我が物顔にかけ回り、被害もそこそこ出てるのでよい番猫になってくれないかという話。

こんなでぶ猫、リスなんか追いかけられないよと言うと、いやいるだけで充分な貫禄だよと。そうかもしれない。

「ちぃちゃん、お名前つけてくれる?」と聞くと、即答で「たーちゃん」と言う。よし、たーちゃんか。たーちゃんたーちゃん、と猫に声をかける。

「ダサすぎだろ」と息子が言うから、「アンタの『ぷっちゃん』も、似たようなもんだ」と返す。

じわじわじわじわと愛猫が死んだ日が近づいていて胸が苦しかったが、たーちゃんに救われている。チュール買ってこようかな。