息子が仕事終わりに走って帰ってきた。ゼーゼー言いながら猫に駆け寄る。
死んでないし、瀕死でもない。
そしておかあさんが昨日より元気だ。
あれ?
ああ、ごめん。
LINEしてあげればよかった。
おとうさんにLINE送っとこう。
昨日。
もう猫が自然に死に行くのを邪魔するのはやめようと思った。
押さえつけてフードを口にねじ込むように放り込むこと。
「猫 強制給餌」の検索でやり方は山ほど出てくる。その行為の是非論も含めて。
わたしは。猫の顔を見れば、給餌の準備をしてしまう。
この猫は、いつまで生きられるのか。
この猫は、死ぬまで体を押さえて食べさせられるのか。
そうやって寿命を伸ばさせられるのは、誰のエゴなのかと。
考えながら、涙は出る。
今朝、義妹に言った。
今日パートから帰ったら、病院に行く。
行って話してくる。
自然に死ぬのを邪魔したくないって。
輸液も最後にする、フルコース打ってくれって。
で。
病院に行った。
話した。
自力で飲まない、食べない。
水さえもうずっと、自分では飲まない。
土曜日から強制給餌をした。
もうやめようと思う。
自然に死ぬのを邪魔したくない。
「食べさせていましたか」
はい、と答える。
がっつり押さえつけて食わせてる、とは言えてなかった。
「いやがりますか?」
はい、と答える。
だから辛いのだ。
「ふーむ‥」と、医師がうなる。
それから続けて話す。
「正直、厳しいが。
しかし食べさせられているなら、食べさせていてもいいと思うのだが。
吐いて悪化しているわけでもない。
実際、体重が維持できているし、むしろ少しだが増やせてもいる」。
「このまま食べさせていたら、持ち直すようにも思えなくはないし」。
「わかりませんが」。
それから、今日で最後にしようと思うので今日はフルコースでいってくれ、というわたしに対して、
「少しでも食欲でるように、ビタミン剤も入れておきましょう」。
輸液が体に入っていく時間、いつもは待合室で待つのだが。
今日は医師と奥様と3人で、猫のことについて話し続けた。
すぐに涙声になるわたしには、なんか癒された時間だった。
結論は。
ゆるい給餌をまだ続ける。
まだ死なないと思う。
人事をやんわり尽くして、天命を待つ。