リツエアクベバ

satomies’s diary

旧友

ポストに自費出版の本が入っていた。短文のエッセイ。送付元の著者はダウン症の親の先輩で、地域の福祉賞をもらったことがある、狭い世界でそっと有名な人だった。

9歳上のその方とは、わたしが31の時に知り合った。ファンが多いカリスマ的な人だったのだけれど、わたしたちはすぐにとても仲良くなった。それを生意気だと、わたしのことを悪くいう人もいたのは知ってる。

話したいことは常に山のようにあった。わたしたちは、とにかく、A4の紙にぎっしりと思うことを書き、ファックスで流し合った。彼女は自営業の仕事の合間に、わたしは子どもたちに追われる時間の合間に。

思うこと、感じること、考えること。話す時に多くの説明がいらなかった。ことの根っこの価値観や、理解するポイント、そうしたことをてらしあわせたりする作業が要らなかった。そうした相手に巡り会えたことに、わたしたちはかなり興奮していたのだと思う。

そのファックスのやり取りに、わたしたちはリングネームをつけた。ファイターお龍とストロングモーモー。なんでそんなことになったのかも忘れた。辰年と丑年が元ネタで、ぎっしり書いた最後にリングネームとイラストを描いた。

そこから何十年も経った。わたしが転居もした。メールのやり取りをしたこともある。
ただ、あの勢いはわたしたちにはもう無い。
なんとなく行き来して、終わってしまう。

送られた本のページを開き。そこに書いてある字面の奥の、彼女自身の心が見えてくることに(ああ)と思い、それがとても懐かしかった。

明日、手紙を書こうと思う。そして誘おうと思う。ねえ、わたしたち。文通をしない?この時代に。不便になった郵便を使って。
なんかきっとそれが、今のわたしたちにはネットの一瞬のやり取りより、合っているような気がするんだ。

A4の紙にびっしりといろいろ書いたあの頃、楽しかったな。もうあの体力も集中力はないけれど、ぽつぽつと送り合うのは楽しそうだ。