リツエアクベバ

satomies’s diary

花に水やり

梅雨があけ、陽射しがヤバい。水を、水をくれという植物たちに水をまく。

父が死んだのは2013年の春だから8年前か。そのくらいからわたしは、ガーデニングおばはんになった。
一時の夢中さは落ち着いたが、それでも鉢は多い。

無駄に広い庭に立ち、水をまきながらふと、四月の息子のことを考えていた。

退院して家に帰り、不在中のことを喋り続けていた息子が「あ、花に水をやらなきゃ」と庭に出て行った。
四月の頭に発症して、月末に退院。ふと息子の姿を追うと、緑の鉢だった多年草宿根草が、春の花を咲かせていた。ああ、春が進んでいるのだなと思った。

特に何も頼まなくても、母の不在に植物の世話を請け負わなくてはと。
気がついてくれ、そう思ってくれた息子に感謝をした。

今日、水をまきながら。感謝ではなく別のことを思っていた。

母が倒れ、運ばれていき。父と姉も悪化して入院していくのをひとり見送った息子。
夫は息子に「必ず三人で帰るから」と言って出たと。そのとき、わたしの病状は深刻だった。
息子は父親に「必ず三人で帰るから」と言われながらも、自分がひとり残されたらどうしようとかなり思ったと、退院したわたしに話した。

今日、水をまきながら。急に「たったひとりで」庭に立っていた息子のことを考えていた。ざわつく孤独を、急に共感した。

あの恐怖の物語の日々が終わって、本当によかった。
あの子がとても平和に家を出ることができて、本当によかった。
しみじみと、しみじみと、感じ入る。