リツエアクベバ

satomies’s diary

がんばれ、ママ

スーパーのレジ近くで、子どもを叱責する声が聞こえてきた。何やってんの!何やってんの!なんでアンタはこういうことするの!
小さい子を3人連れた若いママがそこにいた。叱られていたのは年長児くらいの男の子。そばにいた女の子二人はまだ小さく、一人はベビーカー。
まっすぐママを見つめていた男の子は、ママが「返してらっしゃい!売り場に返してらっしゃい!」と、100円だかそこらのハイチュウを乱暴に差し出すと、顔を真っ赤にしてわーっと泣いた。「返してらっしゃい!いいから売り場に返してらっしゃい!」。
ママの声は大きかった。厳しい叱責の声があたりに響いてた。男の子もわーっと泣いた。周囲はみんななんとなく、じいっとその様子を聞いていたと思う。ああいわゆるよくある「買って買って」の類のトラブルか、と。
でも。よくあるトラブルじゃなかった。事の経緯がわかった途端、ママの心情を思うと泣きたくなった。
「どうしてダメって言っても何度もこういうことをするの! お金を払っていないものをママのカバンに入れちゃいけない!」
「ママが何度言ってもわからない。じゃあお店の人に聞いてごらん!お会計をしていないものをママのカバンに黙って入れていいんですか、って!」。
うわっ。うわっ。うわっ。そういうことか、と思った。周囲もみんなそう思ったと思う。キーキー怒ってるように見えてたママに、味方がたくさんついた瞬間のような感じだった。そりゃこのタイミングでばしばし怒るのは正しい。でもホントにそれはつらかろう、と思った。
レジの人は、がんがん自分の仕事をしてた。もう、がんがんがんんがん自分の仕事をしてた。「これ、買わないので」って言われたハイチュウを横によけた。それでもって、がんがんがんがん自分の仕事をしてた。
「ママが何度言ってもわからない。じゃあお店の人に聞いてごらん!お会計をしていないものをママのカバンに黙って入れていいんですか、って!」。
これ、ママ、三回くらい言ってた。レジの人は、がんがんがんがん自分の仕事をした。ママが「そうですよね」とか振ってたら、何か答えてくれたかもしれないとも思う。でもママもお店の人を見て言うとかはしていなかった。レジの人も介入すべきじゃないと判断したんだろう。
「じゃあお店の人に聞いてごらん!」
ママがこれを言うと、男の子はブルブル震えて首を横に振る。要は悪いということ、それは盗みであるという自覚はあるらしい。その自覚がありながらやっているからこそ、ママはぎゃーと思うところだろうと思った。
そして精算は終わった。どっちかがチョーおばはんちっくなキャラを持ってたら別の展開があったかもしれない。「それは泥棒です」って。「ママが警察につかまっちゃう」って。いや、正しいしつけとかなんとかそういう言い方とかあるのかもしれないけれど、この年齢くらいだったらママ人質にするのが一番効く。でも、でも二人ともとてもふつうに悪くない感じでふつうに他人として通り過ぎ、別の展開は起きなかった。
あれ、どうすりゃいいんだろう。最初に「成功」されちゃったことを知った時のママは、どんなにせつなく苦しかっただろう。あれ、どんな解決策があるんだろう。
キーキーって、ああよくある、って思ってごめんなさい。いや、よくやってるよ、がんばってるよ。解決できること祈ってるよ。きっと解決できるよ、あんなにママがんばってたんだから。健闘を祈る。