リツエアクベバ

satomies’s diary

ばったばた

連休明けの今朝、「今日は学校だよ、いってらっしゃい」と娘を送り出し、自分も午前中パートに出勤。30分程度経ったら携帯がピピピと鳴った。電車の遅延や運行停止を知らせてくれるメールサービス。あらら、電車が止まってる。
位置検索かけて駅にいるのを確認し、事情を話して午前中パート中抜け。駅に急ぐ。車の数は多いし、駅の周りは携帯握った人でごった返している状況。改札のかなり遠くから人混みがすごくてなかなか前にも進めない。
以前電車が止まって同様のことがあったときにも、やっぱり駅はこんな状況だった。でも(その時よりもすごいな)とも思った。あのときは、初めての経験だったこともあったし娘が中一だったってこともあったし、「ちぃちゃんちぃちゃん、おかあさんすぐに行くからね」と自分自身ヒーヒー状態だったことを思い出す。(自分、あの時よりは少しは落ち着いているかな)と、ちょっと思う。
あの時、前になかなか進めない状況で、なんとか前に出ようとするわたしに非難の声があがった。それでわたしは悲痛な声を出して叫んだ「ホームに知的障害がある娘がいます、すみません、通してください」。道をすすっとあけてくださる人の中を進むことができたんだった。
あの時よりもすごい状況の人混みの中、なんとか前に出ようとするわたしに非難の声はあがらなかったけれど、通して欲しいと思ったので叫ぶ「ホームに知的障害がある娘がいます、すみません、通してください」。
前に進む道は少しひらける。進み出そうとしたら、そこで声が聞こえた「うざっ!」。ひえー、思わず振り返って聞いてしまう、「わたし?」。背の高い男の子が大きな目をぎろっとひんむいて続けて言った「困ってるのはオマエだけじゃねーんだよ!」。
ふむ、そうだよな、と思う。思うけどわたしは前に進まなきゃ。なので再度叫ぶ「ごめんなさい、迷惑かけます、でも知的障害のある娘がホームで立ち往生してるんです、わたしは助けに行かなければ。ご理解ください、お願いします!」。いや、だって、わたし行かなきゃ。
道をあけてくださる人の中を進む。改札が見える、あ、ちぃちゃんだ。電車ストップのアナウンスを理解できなければ情報難民としてホームで来ない電車を待ち続ける娘。その娘が、改札に向かって進んできた。この子自分で判断したのかしら、それとも誰かが促してくれたのかしら。わたしは誰にお礼を言えばいいのかしら。ちょこっと途方にくれてる間に娘はわたしの姿を確認して、わたしの前に進んでくる。わたしも前に進む、娘を無事キャッチ。ちぃちゃんちぃちゃん、おかあさん来たよ。
無事にキャッチしたものの、今度は人混みを戻れない。「ちぃちゃん、混んでいるからね、ちょっと待ってね、ゆっくり行きましょうね」と言ったものの、さてどうやって戻ったものか。
そうしたら、そこに水色の服を着た50代くらいの女性がしゃきっとした声でわたしに言った「私が動くから、私の後についてらっしゃい」。はいっ!
人混みの中を少しずつ戻り始めたら、目の前にニコニコした顔の男性がいた。思わず口をついて出る「ありがとうございました!」、にっこりしてうなづいてくださる。左側の混雑の正面にも、ニコニコした顔の女子高生がいた「ありがとうございました!」、にこにこっと応えてくれる、わあうれしい。「この子たち一人一人には一人につき10人の応援者がいる」って言った野沢和弘氏の言葉をここで急に思い出す。
あ、そうだ、叫んで道を作っていただいたんだから叫んでお礼を言わなきゃ、と、ここで突然思いつく。「ご迷惑おかけしました、ありがとうございました!」。視界にさっきの男の子の姿が入る、「ご迷惑おかけしました、ごめんなさい、ありがとうございました!」。ぷいっとそっぽ向かれちゃった、また叫んでうざかったんだろう、ごめんなさい。声でかいヤツってうるせーもんな。でもちゃんとごめんなさいもありがとうも言わなきゃ、って思うわたしのエゴを押しつけてごめんなさいだよな、とか思う。それに本当にわたしを傷つけたければ、ここでひとことある種の言葉を言えばいいことで、そんなことをその男の子はするわけじゃない。要はこの男の子だってこの突然のトラブルの被害者だ。そこで突然叫ぶかーちゃんが出現したら、そりゃカンにもさわっただろうなとも思う。
人混みを抜けたのを確認したら、先導してくださった女性がすたすたと振り向きもせず消えようとした。わあ、ちょっと待って、お礼を言わなきゃ。ひひひ、追いついたもんねー、「助かりました! ありがとうございました!」。なーんでもない顔して、ちょっとうなづいてくださった。かっこいい、かっこよかった、ステキな人に出会えて本当にうれしかった。
人にね、迷惑をかけることある。でも。この子がわたしのところにやってきて、わたしは「おかげさま」って言葉が本当に実感でわかるようになったんだ。特定できる人にありがとう。でもって特定できない人にも言いたい、「突然のトラブルはあったけれど、たくさんの人に助けていただきました。おかげさまで、娘は無事に学校に行けました。ありがとうございました」。