息子が塾で過去の模試の問題をやってたんだそうだ。おもしろい話だったんだよ、って、迎えに行った車の中で話してくれた。試験問題だの問題集だのなんだのって中に出てくる文章を「おもしろい」って言って話し出すのを聞くのは初めてだったんで、ふむふむと聞いてた。
あのね、ケンって子がいたんだよ。ケンって子はモーツァルトって名前の犬を飼ってたんだ。
ケンって子は兄弟がいなかったんだって。で、ケンの両親が兄弟の替わりにって白い犬を飼うことにしたんだって。ケンはその犬が白かったから、シロって名前をつけたんだって。ケンとシロはすごく仲良しになったんだって。
ケンのおかあさんはピアノの先生だったんだよ。おかあさんがケンにピアノを教えているときにね、モーツァルトの曲を弾くとシロがソファの上をジャンプして、ケンのところに来て、ケンの足の上に座るんだって。他の曲だとそんなことはしない。
なんでだろうって、ケンはおかあさんに聞いたんだ。おかあさんが教えてくれた、おかあさんの友達にユリって名前の娘がいる人ががいた。ユリもケンのおかあさんにピアノを教えてもらっていた。ユリの飼っていた白い犬は、モーツァルトの曲が好きだった。ユリがモーツァルトの曲を弾くと、その犬はユリのところにやってきてユリの足の上に座ったんだって。
でもユリは、病気で死んじゃった。ユリのおかあさんはユリの犬を飼って欲しいってケンのおかあさんに言った。で、その白い犬をもらってケンの犬にした。この犬はモーツァルトを聴くと、ユリを思い出すんだろうねって。
その話を聞いて、ケンはこの犬の名前を「シロ」から「モーツァルト」に替えたんだって。
今は15歳になったケンが、5歳の時に飼い始めた犬のことを友達にする話。聞いていておもしろい話だったんだけど。国語の読解問題ではなく、英語の長文でした。英語は苦手ではないけれど、和訳は基本的に苦手だった。国語の文章読解は大の苦手になっているけれど英文は平気らしいというのはわかってたけど、つらつらと話し始めた「和訳」にやっぱりちょっとびっくりした。帰ってきて問題文を見せてもらったら、関係代名詞がばしばしの長文だった。英文での問題になっているこの長文の読解の設問はパーフェクトだった。意味を取れているかという設問で、国語の小説読解で息子が大の苦手とする「主人公の気持ちうんぬん」って問題ではないからかもしれない。
小説だのお話だのを文章で読むということに全く興味を見せなかったこの子が、こうした「読んだ話」をあらすじで話し出すのは全くもって初めてのことだったのでちょっと新鮮だった。読解問題で「よい文章にふれる経験」ってのはあると思うんだけど、この子はこれを英文で経験するのか、とか思った。まあ中学英語の長文だから国語にすれば小学生の長文読解レベルかもしれないけれど、小学生の国語の教科書に出てくる文章には全く反応しなかったからなんかいろいろと驚いた。
英才教育大好きのかーちゃんに育てられて早くから英語とか英文とかやってたら、この子はまたなんか違ったのかもしれないとちらっとだけ思ったけれど、まあその手の母親ではなかったので仕方がないってことですな。