リツエアクベバ

satomies’s diary

今日は泣いたぜ、ちょびっとだけど

すごい心配したのよ、だってどこにもいないんだもの。
今朝のこと。雨と風がおさまっていたタイミングだったので、「いってらっしゃい」と娘を登校に出した。風がひどくなってきたので、今どこにいるかと位置検索機で検索をかける。週三午前中短時間パートの出先からね。
普通だったらとっくに学校のそばの駅に着いているはずの時刻に、まだ家からの最寄り駅にいると位置検索機は言い続ける。「すみません、どうやら子どもがトラブっているようです」、と言って職場中抜け。
あわてて駅に駆けつけて、そこらじゅう探し回るんだけど、どこにもいない。位置検索機が示し続ける地図上のポイントに来てるのに。
でもおかしいの。その地図上のポイントは、どう考えても線路の上なんだよね。位置検索機の位置検索の誤差なのか。でもその付近一帯に姿形も無いのはどうしても変だ。
位置検索機にしている携帯を、その位置検索の地図を表示させたままにして、そして目指すは交番。
「すみません。知的障害のある子を特別支援学校に通わせるのに、電車を使った自力通学を4年前からさせています。今日はもうけっこうな時間、位置検索機が同じ場所を示し続けていて、そして本人が見つかりません。その地図はコレです、わたしには見つけられませんでした、助けてください。」
駅の階段を下りながら、そんなセリフを組み立てる。端的に、そして事情と今助けて欲しいことを正確にぱっと相手に伝えられるように。
交番が近づく。ガラスの引き戸で交番の中が見える。走る。がらがらっと引き戸を開ける。交番にいる人に挨拶をする前に、という失礼さで、そこに座っていた娘を抱きしめる。
「ちぃちゃん! おかあさんちぃちゃんのこと探したんだよ! ここにいたのね、ここにいたんだ。ああよかった!!!」
おお、用意していたセリフなんて前に、ぎゃんぎゃんシーンを展開。口を開いて出てきたのは変な声だ。
ふっと前を向き直り、最敬礼。「お世話になりました。ご迷惑おかけしました。すみませんでした。」でもなぜ身元がわからなかったんだろう、カバンを開けば連絡先のホルダーもつけてあるし、携帯だってカバンに入ってるし。
「おかあさん、カバンはありませんでした。身ひとつで保護されました」
え???
「名前を聞いても、発音が不明瞭で聞き取れませんでしたが、紙と鉛筆を渡すと自分の名前を書いてくれました」。
教育ってでかい。10桁の電話番号を覚えられないのはつらいけれど、それでも名前を書いただけでも上出来とほめてはやりたい。
「駅で保護されたと助役さんが連れてこられました。その時点で何も持っていませんでした。」
するってえと、わたしが位置検索機で探し続けたのは、本人じゃなくてカバン???
ありがとうございました。駅に行ってお礼とお詫びと、そしてカバンを見つけて来ます。
助役さんに聞くに。娘は駅のホームの中程で座り込んでいたそうな。そして。カバンは線路上から見つかりました。どうやら電車に乗り込む時に線路とホームの隙間に落としたらしい。けなげに自分の位置を示し続けていた携帯は、カバンから放り出されてカバンの上にちょこんと乗っていた。雨風の中、オマエは無事でそこにいたんだねえ。
娘はトラブルがあると、その場所から動かない。さっきまで「カバンは?」と聞いても「あっち」とか「こっち」とか、わけのわからんことを言っていたのに、「カバン、落っこちちゃったの?」と聞くと、「うん〜〜」と大きくうなづく。「っこっちゃった」とさえ言う。最初から言ってくれよと思うけれど、ぜいたくは言えないよなとも思う。
自力通学も今年で五年目。まあいろいろあると思う。リュックタイプのカバンを、最近時々、なんだかなんでだかわからないが、わざわざ下ろして手に持ちたがる。最初は電車の中で座っているときにも背中にしょったままでいたのだけれど、どうやら電車の中の風景で「座るときは背中から下ろして手に持つ」という学習をしたようで。そしてホームではホームのベンチに座ったときも「座るときは背中から下ろして手に持つ」ことをやり始めていて。それで手に持っている状態で電車に乗り込み、手が滑って落としたかもとも思うのだけれど、実は傘も無いわけで。傘は電車の中に、と考えると、下りる人とぶつかって背から落ちたのかとか。真相は不明。