作業能力検査。希望者による実施。希望の条件は下記だけれど、希望すれば受けられるものらしい。
下記の条件を満たす中学校個別支援学級、特別支援学校(高2)の生徒を対象
- 公共交通機関を使っての自力通学ができている生徒
- 卒業後、一般就労及び就労移行支援(授産)を希望している生徒
- 口頭の指示による、一時間程度の各検査が一人で実施可能な生徒
いやなんとなくさ、高2になったら受けるものみたいな感覚があって。だからつつ〜っと希望出しちゃったんだけど。
検査当日が近づくにつれて、あ〜あ、って思ってて。なんかかわいそうなことしたんじゃないか、って。本人が希望したわけじゃないよな、って。経験、経験とか言い聞かせながら、当日。
特別支援教育の研究機関である施設に行く。面談室に通される。検査官が二名、「お名前は?」とか「学校名は?」とか簡単な質問をされる。全てまっすぐに本人に対しての質問。「○○です」と答えるのを聞きながら、かーちゃんドキドキの緊張。
本人と検査官が別室へ。マジックミラーのある部屋。マジックミラーのこちらから、検査する方と担任の先生と、そしてわたし。作業をする姿を真正面から見る。今日やった作業の検査項目は下記。
- 名前、住所、生年月日、電話番号、学校名などを筆記で記入
- 時間の読み(現在時刻)
- タッピング(制限時間内での早打ち:小さいカウンターのようなものを1分間連打)
- ボールペン組立
- ボールペンの芯を透明なプラスチックケースに差し入れて、先端部分の黒い先を回して装着し、キャップをする。
- 練習で一回。その後「4本組み立てて、できたら『できました』と言ってください」と指示。
- 1〜10まで番号の振られた木のケースに、組み立てたボールペンを番号順に入れていく。
- ナットの選別:ねじにつけるナットが大・中・小入ったトレイから、大・中・小をそれぞれ選別し、トレイに分けて入れる。
- 色鉛筆の仕分け(12種類)
- 12色の色鉛筆が並べられたケースを見てそれを手本にし、5セット分60本が無造作に入れられたトレイから、空のケースに一本ずつ色の順番を正確に入れていく。
- 色鉛筆を12色揃えて入れたら、ケースの所定の部分に消しゴムとエンピツ削りを、位置を正確にセットする。
- 色鉛筆の上に紙(新品のによく付いている紙)をのせて、ケースのフタを閉めて1セットの製品化が完了。
- それを5セット。
マジックミラーのこちら側。作業療法士の検査官の方が作業の様子の観点を実況。どんなスポーツの実況より手に汗握るシーン。
ちぃちゃんすごいの、頑張ったのよ。何が頑張ったって、出される指示の要点を読んでいくの。応えようとしていく。検査官の方の実況の、何度も出てくる「あ、コレはすごいですね」という言葉が胸にくる胸にくる。単純に何かができてすごい、ってことじゃない、応えようとしている姿勢とそしてそのことでできていくこと。
「ボールペンの組立は経験があるんですか?」と質問される。前年度の終わりに1週間ほど、と答える。最初は全然できなかった、習得していこうとすることに先生たちが驚いていた。もう一ヶ月も経っているのに、指導はちゃんと覚えていたんですね、と答える。
ナットの選別は、はっきり言ってかなり難しい。まちがえつつ、まちがいを何度も指摘されながら、最後までよくがんばったと思った。「両手を使って、右手と左手と違う種類のものを選別」という指示にも、応えようとがんばってた。「あ、今、両手を使って正解を出しましたね、これはすごい。これはかなり難しいんですよ」と検査官の方。
検査項目全てこなせるとは思ってなかった。どこかでいわゆる「お開き」になるだろうと思ってた。実際、色鉛筆の仕分けに関しては3セット目で飽きた。は〜とため息をついて、姿勢を崩した。でも。突然立ち上がって椅子の位置を直し、座り直して取り組む。最後まできちんと完成。
検査終了。部屋を出て戻ってくるとき、自分、泣いちゃうかと思った。こんなに大きくなった。こんなに成長した。えらいね、よくがんばったね、って。でも検査を希望した親がこんなとこで泣いちゃあまりにもバカ親なので、ぐぐっとこらえる。
ちぃちゃ〜ん、エラかったねえ、よく頑張ったね〜〜、と大テンションで戻ってくる娘を歓迎。見られていることを全く気づいていなかった本人はぽかん。
「指示を読もうとする。この子に必要なのはこの子に理解できる指示。作業の渡し方に工夫があればこの子の力は発揮できます」、というのが検査後の面談の内容。
わたしは。「検査の希望は出しましたが、期日が近づくにつれて(かわいそうなことをしたかも)と思っていました。自分ができないことを思い知らせる機会になってしまうと思っていました。でも。本当によく頑張ったと思います。それと。マジックミラーで正面から観察できる機会というものも、今までありませんでした。どんな風に考えて、どんな風につらくなって、どんな風に自分を建て直して、どんな風に集中を保とうと努力するのか。それが本当によくわかりました。今日見たことは、忘れないようにしたいと思います。機会を与えてくださってありがとうございました」。
この子は、この子は、最重度なんだぞ〜、この子の脳味噌は二歳かそこらと言われてるんだぞ〜、と叫びたいような感じ。でも。本人は簡単に規定できないとこにいるんだな、きっと。追い立てることはしたくないけど、認めてやりたいとこはたくさん。
「今日はたくさんほめてあげてくださいね、好きなものをたくさん食べさせてあげてくださいね。本当によく頑張ったと思います」と、担任の先生の言葉。