ある日スーパーで、大人になった「娘の友だち」に会った。
ちょっと前にこの「Mちゃん」が遊びに来た。彼女が子どもの時に娘と彼女は友だちで、そしてわたしと彼女も友だちだった。
彼女は大人になった。だから、「あの時のあんなこと」とか答え合わせをした。
彼女はいつも娘を見ていた。自分との違いについて大人に聞き、「ダウン症」という言葉を知ったのだそうだ。わたしはそんなことは知らなかった。彼女はダウン症という言葉を知り、ダウン症というおおまかな説明を聞き、娘を理解しようとしたのだそうだ。
結局、彼女はダウン症ではなく「ちぃちゃん」に戻ったらしい。「ちぃちゃんは頭がいい」「ちぃちゃんはいろんな人のことを見てる」「ちぃちゃんはいろんな人のことをわかっている」。そう思っていたそうだ。
知的能力とかいうことではなく、娘は非常に人のことをよく見ている子なので、このあたりは語彙はどうあれ「わかっている」ということのように思う。ただ、それをわかっていた彼女はとても賢いと思う。
娘と友だちであることについて話しかけてくる大人たちに、実に素っ気ない態度でいなしていたことについて。自分が自分の好きな友だちを待っていたりいっしょにいたりするだけなのに、別にアンタに関係ないと。このあたりはそうだろうと思ってたので、本人の言葉でなんか笑ってしまった。
わたしは都会の子で。田舎の生き物などまるで知らずに育った。この辺りの公園で、この子たちが小さい頃カナヘビと呼ばれる小さいトカゲがたくさんいた。ある日公園で、彼女がわたしに言った「ちょっとこれ持ってて。逃さないでよ!」。わたしの広げた両手に数匹のカナヘビがのせられた。
ぎゃー、ぎゃー、ぎゃーと思いながら、逃しちゃいけないので声も立てずにひたすら固まって、「ちょっと持ってて」のミッションをこなしたんだ。「わたしはバリバリ都会の子なんだ。あれがいかに、わたしががんばったことか、認めてほしい!」。と、わたしはお褒めの言葉を大人になった彼女にねだった。
「ちゃんと応えてくれるの、やさしいよね」
信頼、されてたのか。と。ふわふわとしあわせになった。