リツエアクベバ

satomies’s diary

言葉の背景

fujiponさんがおもしろいエントリをあげたなあと思った。

「正しいこと」の牢獄 - 琥珀色の戯言

ここで出てくる「私の言うこと、何か間違ってる?」というセリフ、以前、いやはるか昔だな、友人(♂)と会話のネタにしたことアリ。どこからこんな話になったのかさっぱり忘れてしまったんだけれど、はるか昔の記憶をたどって思い出すに、友人(♂)はこんなことを言っていたように思う。

女ってのは「私の言うこと、何か間違ってる?」って言うだろ? アレはすごいよな。何がすごいって、自分の言うことを間違ってないって前提から出てくる言葉だよなってとこだよな。
いや間違ってるとか正しいとかって、そういうことじゃないんだよ。間違ってるか?って、そこだけストレートに言うなら、そりゃそこだけ言えば間違っちゃいないよ。でも正しいとか間違ってるとかって、そういう観点じゃないだろ。

なんてとこだったような気がするんだけど。でもって当時まだまだ若かったわたしは「ううむ」と言った。いや実際このフレーズを使った経験はあるからなあ。スネにキズ持つ状態で「ううむ」と考える。
あのさ、よくわからないけどさ、シチュエーションだけで考えるにね、この「私の言うこと、何か間違ってる?」ってのが出てくるときってのは、多分かまって欲しいってことだと思うわなあ。なんか何らかのことをきゃんきゃん言ってて。そしてなんだか沈黙されちゃう。そういうとき、かなあ、コレが出てきやすいのって。
わたしはここにいるの、あなたにはわたしが見えているの? わたしはこう思う、こう感じる、そのことに応えてほしい。でも沈黙されたらわからない。わたしが間違っているの? まちがっているならまちがっているって言って欲しい。
な〜んてことなんだろうな、と。要するに究極、反応して欲しいってとこで出てくるフレーズなんじゃないかなあ、とか思う。でもこのフレーズ、確実に男を黙らせるんだよなあ、ってとこに結局わたしは行き着いたような気がするな。
まあ、若かったわたしはこのフレーズを実際に使ったことはあるが。それでも夫とのつき合いの中では結婚以前も使ったことは無い。彼はなんつ〜か、「人をそのままにしておく」ってことが常態なとこがあるというか。そしてその「そのままにしておく」で、わたしは自分の個性のかなりな部分を許容されているという実感がどこかいつもあるからかもしれない。つまりわたしは正しくはないんだな。なんかかんかきゃんきゃんってとこで、そのきゃんきゃんで考えること自体の筋は、そのときはわたしは「間違ってる?」とか聞けるような筋道は立てられても、わたし自身まるごとは全然絶対正しくはないんだな。そしてそのことに人間の自由ってものがあるんじゃないか、とか今は思うな。
で、この「人をそのままにしておく」ことがそれなりに常態になっている夫なので、わたしは彼が怒るところをほとんど見たことがない。その彼がちょっと前にものすごく怒っていたときがあって。
怒っていた内容は仕事の件。彼がものすごく相手に対して怒る弁の電話というものがたまたま自宅にいたときにあって。
彼は電話の子機をもってそそくさと別室入り。電話を取っていたときは全くの無関心を装っていたわたし。抜き足差し足で、その別室の扉の陰に張り付いて立ち聞き。おおおおお、怒ってる〜〜〜。
また抜き足差し足で居間に戻り息子に手招き。くちびるに人差し指を一本あてて(静かに)と要求しながら、今度は二人で抜き足差し足で扉の陰に。しばし立ち聞きしてからまた抜き足差し足で居間に戻り、「おとうさん、怒ってるよ〜〜」。
そんな往復してたら、見つかっちゃった。きゃ〜〜。だって「わあ怒ってる」って思ったんだもん。
み、み、見つかっちゃったよ〜とビビっているわたしに苦笑しながら、「あのね、仕事ってのはそういうもんだよ。譲れないとこはそりゃ怒るよ」って。ですね、納得。