リツエアクベバ

satomies’s diary

地元の夏祭り

 夏祭りっていうか、盆踊りの行事が土日で。娘がとても好き。輪の中でずっと踊り続ける娘。開始時刻から終了時刻まで。揃いの浴衣を着た地元の「踊りの会」の奥様方が模範のように踊る。娘はこの奥様方にずっと見守られて育っているようなもの。みな、娘がその輪の中にずっといることを喜んでくださる。
 娘はこの踊りの輪に入っていくときに、目ですすーっとこの「踊りの会」の親分とサブ親分の位置を確認する。お二人は娘に笑顔と視線で会話する。そういうときこのお二人は娘のことを、かわいくて仕方がないような表情をされる。
 終了時にこの「踊りの会」の親分とサブ親分のような位置の方に、いつもご挨拶をして帰る。サブ親分の美しい奥様が「今年もお世話になりました」と頭を下げるわたしの手を取って「大きくなったわね、一生懸命踊ってたわね」とおっしゃって。いやそんな感激されても困るんだけど、みたいな。でもそれはそれなりに見守っていてくださってるからなんだろうと思う。親分は貫禄たっぷりって感じで「好きなことは伸ばしてやらなきゃねえ」とおっしゃる。うひゃ。親分がお師匠さんのお稽古に通わせたら、ってことなのかな、とかちょっと思う。
 息子の中学の先生が3人いらっしゃる。副校長と一年生の担任の方お二人。息子の担任と、そして息子の部活の先生。息子に聞く。部活の先生にちぃちゃん紹介してもいい?「いいけどなんで?」こんな機会でもなきゃ紹介できないから、と答える。担任の先生は家庭訪問時にすでに会っているし。息子の個性というものに、やはりこの姉は重要な要素ではないかとちょっと思うから。
 あの、中心で踊っているあの子が姉なんです、と伝える。「ああそうだったんですか」と先生。この、そうだったのか、というのはこの先生が実は娘を知っていたということに驚く。居住地交流という制度で、学区の中学の障害児学級に中学時代に月に一度参加していた娘。その障害児学級に英語担任として入ることがある、と。そのときに娘が参加していたときがあったと。わたしに言われる前に、あああのときのあの子がいると、そう思って娘を見ていたとのこと。
 「電車に乗って学校に通ってらっしゃいますよね。朝、時々すれちがうんです。」ああそうだったのか、と思う。こうやって、誰かにどこかで見守られているんだなあと思う。
 娘がちらっとわたしたちの方を見る。娘がちょっと「あ」という表情を見せる。あ、あの子先生をわかってますね、とわたしが言う。「そうなんですか!?」と先生がとても喜んでくださる。
 息子の話。以前はわたしにとっては子どもたちだった。でも年齢が上がってそれぞれの進む道進む成長という線がはっきり分かれてきた。わたしにとってはどちらも一人目という感じになって、わたしは不安で仕方がない、と話す。「あんなに素直な子に育てられてきたじゃないですか」と先生がおっしゃる。いや、素直というか素直過ぎて、それはそれでとても不安なんだと答える。器用な子ではないですしね、と。
 部活ね、わたし続くと思わなかった、と言うと、「わたしもそう思いました」と先生が答える。「でも頑張ってるんですよ、きついトレーニングもものすごく頑張ってついてきてるんですよ。スポーツやってた習慣の無さそうな子が、とても頑張ってついてくる。すごいなあと思って見てますよ」と。そうかあ、と思う。
 他にも部活の場面であったことをお話ししていただける。ああそうかあ、そんなことがあったかあとか思う。そしてこんなにも把握していただけているのか、そんな風に成長を見守っていただいているのか、と思う。ありがたいなあと思う。
 小学生のときに娘がとても仲が良かった子。うちにもよく遊びに来てた。その子が来ていて、わあと走り寄って話す。髪の毛が金色に近い茶髪になってて、それでもって最近眉毛が無い。いや剃りすぎててなんだけど、道で時々会うと、あはは眉毛が無い、とか言う。「剃ってたらどんどん無くなっちゃって、もう全剃りでもいいやって思う」とかぶっきらぼうに言う。なんだか投げやりな会話をするとこ、小さいときからちっとも変わらない。なんかここがかわいいんだこの子。
 ちょっと前に土曜日にゴミ捨てに行ったときに会って。そのとき夫に「Mちゃんにそこで会ったよ、あはは眉毛が無いよ、向こうからねーちゃんが来るって思ったらMちゃんだったよ」って言ってたとその子に話す。彼に眉毛の無いMちゃんを見せたい、って言う。彼を連れてこようとしたら、彼女、自分で夫の方に行く。「やあ久しぶりだね」って夫が笑顔で言って、この子が口元だけでちょっと微笑む。
 こんなに大人っぽくなって、眉毛もなくて、ちぃちゃんもうわからないかもしれない、って言うと、「わかるよ」と当然のように言う。娘が遠くからちらっと彼女を見る。かすかに動く視線と表情。「ほらわかった」と自信たっぷりなこの子。そうだよなあ、仲良かったもんなあ、と思う。それから娘がとことことやってきて、この子にぱたぱたっと手を振って、そしてまた踊りの輪の中に入っていく。もう何かをいっしょにやることもないけれど、この子たちは友達だったんだなあ、と思う。ああそういえば、この子が娘のために作り出した遊びは今でも娘の中に生き続けてるんだよ、ってこと。そういうこと言うの、すっかり忘れてしまった。でもそんな具体的なことをわざわざ言わなくたって、この子たちにはそんなことたいしたことでもないのかもしれない、と、ちょっと思った。