リツエアクベバ

satomies’s diary

「十戒」再見

 まちがえてたよ。「十戒」という映画に関しての完全に知識不足。昔のとリメイクのとある、くらいにしか思ってなかった。
 TSUTAYAに行って、「十戒」がどこにあるかよくわからなくて、「『十戒』どこにありますか?」と店員さんに聞いて、連れて行かれた陳列からすっとDVDを取った。
 「十戒」を検索で出して解説なんぞ読んでいて、なんかどうもおかしいと思っていたんだけど、ここを閲覧してはっきりした。わたしが借りてきたDVDじゃない。

十戒/懐かしの映画館近松座

 これがリメイク版のいわば主流になっているものか。だから検索であがるものはコレばっかだったのか。
 っつ〜か、これはわたしは確かテレビで観た。観たはずだと思いながら、今回借りてきたものは記憶とはずいぶんちがっていた。なんか変だとは思ってたんだけど、TSUTAYAに返却に行って、自分が借りたパッケージをよく見てはっきり違うと認識。
 このリメイク版として主流の方、テレビで見たときに、海が割れるとことか石版が神によって書かれていくとことか、特撮がすごくて息子には飽きないはずだと思ったんだ、テーマが重くても。このあたりは↑のリンク先にYoutubeがリンクされているのでご参考までに。
 今回わたしがTSUTAYAでレンタルしたのはこっち。

十戒/SF MOVIE DataBank
(DVDパッケージの画像は→こっち

 主流の方のテレビで見たときの感想は、特撮すごいしかなかった。それしか残らなかった。今回見た方は映像がもっと古くさい。こんなにカラーがきれいじゃない。もっと映像の中に出てくる色はくすんでいる。そしてリンク先のYoutubeの映像からの印象や記憶を掘り起こし、今回見た「十戒」と比べて徹底的に違うのは、モーセがこんなに自信たっぷりじゃないこと。
 今回観た「十戒」のモーセはもっと弱い。もっと自信なさげで、自分が預言者として選ばれたことに戸惑う表情が多い。海が割れるシーンも海を割っちゃうぞ的な迫力はなく、ただ頭をたれて海に向かって祈り続けるという感じ。海もすぐには割れず、集団は海に向かってなんかやってるモーセが何をやってるのかわからず、なんで自分たちが海辺に連れて来られたのかもわからず、ただ呆然と不安と半信半疑の中で待ち続ける。
 海が割れるシーンももっと地味。海が割れ、モーセ率いるイスラエルの民が海を渡り、そして割れた海を閉じるとき、モーセはとてもつらそうに海を閉じる。ファラオの軍隊が次々に海に飲み込まれていく様子をイスラエルの民は痛ましげに見つめる色は濃い。なんかさ、出てくる人間たちがとてもつらそうで、そして弱いんだよね。偶像崇拝モーセが怒るシーンも、怒るよりもとにかく悲しむ方が前面に出てくる。
 ファラオの哀しみというものが強く残って再見。悪いヤツとか圧政とかって印象ではなく、ファラオにはファラオの人生の理由ってのがやっぱり見えてくる。ファラオが裁く裁判の場では「厳しくすることで平和が成り立つ」って言っていて、厳しさをもつことに対しての疲れも見える。奴隷を解放するわけにはいかないファラオの理由なんてのも、推測したくなってくる感じがある。
 この、中心となる人物が人を裁くシーンは、割れる海を渡ってからモーセが人を裁くようなシーンが対照的に出てくる。やはり人を裁くことに疲れた表情が見える。神が律法を与える、ということになったのは、それらが契機になっているかのような流れ。
 モーセは自分の立場にずっと戸惑っている。自分の弱さを知っていて、だからこそ神を信じているって感じがする。こっちのモーセの方が主流リメイク版よりもっと情けなくて、もっとかっこ悪い。だからこそ、最後のシーンがよくわかる。モーセが民をカナンに連れて行く役割を神から担ったけれど、モーセはカナンに着く前に死ぬ。跡を引き継ぐものにそのことを話し、別れのために自分の命を終えるために山に登っていくモーセ。人として何事かをやりとげたという感じがする足取りなんだよね。ああこのリメイク版の原題は「MOSES」というのか。それはとてもよくわかる。
 わたしはこっちのモーセの方が好きだし、こっちのリメイク版の方が好きだと思った。場面転換がやたらに突然のシーンも多いし、映像の色味は古くさいし、日本語吹き替えも無いし、エンターティメント性は全然主流版には差をつけられてるし。でも今回観た「十戒」の方がわたしは好きだと思った。今回観られてよかったと思った。
 なんだか息子に地味な方の「十戒」を見せることにはなったんだけど。本当は特撮ばんばんの方が見やすかったんだろうけれど。自由研究でどこかの国を調べて、ってことを選んで、じゃどこの国にする?って聞いたときに、「アンタそういえば授業でアパルトヘイトのさわりをやってたよね。南アフリカにする?アパルトヘイトをとりあげたおもしろい映画があるんだけど」なんてことを言ってたわけで。
 今回自由研究をとりあえず仕上げた時点で、そういえばあの映画はなんだ?という話になって。んじゃ観てみるかい?ってことになりまして。今週は実家にイトコたちが来てるのでばたばたしてるから来週借りてくることにしたんですが。
 ってなことで、来週以降のどこかで「遠い夜明け」をレンタルしてきて観る予定です。かーちゃんもちょっと楽しみ。