リツエアクベバ

satomies’s diary

ご無沙汰

実は現在大きなとこを超えているとこでございます。よくわからないまま、そろそろ超えられるかというところではある。
大事な大事な娘の朝の身支度に、かわいいヘアピンを留める作業が最近加わった。大事な大事な娘の髪の毛が、抜けた。抜けたところを隠すようにヘアピンを留める。通常の分け目のところがごそっと薄いので、いわゆるイチキュー分けならぬニハチ分け?くらい。幸いにも前の方のほんの少しの面積ではあるのですけれど。
朝の嘔吐も何度かあったので、遺伝科に連れていく。成人期のダウン症者の脱毛については、甲状腺の異常と人間関係の変化やストレスが考えられる。甲状腺機能に関して要経過観察中で、10月には採血の予定があった。だから即甲状腺機能なんちゃら?と思ったけれど、9月の採血の検査の結果はばりばり正常範囲内。医師に日常生活についてひとつひとつ質問されるけれど、こちらの答えは「NO」ばかり。同性のきょうだいの結婚も身内の不幸も無い。これらは「ダウン症の方が乗り越えにくい喪失体験」としてよくあることなんだそうだ。
さて、人間関係、と。作業所の職員さんは?と聞かれて、ストレスになる要因があるとは思えないと答える。人はそれぞれいろいろな個性があるけれど、そしてそれで合う合わないは基本的にあるだろうが。でも、娘の通う現場ではリーダーとなっている人物が非常に神経が細やかだ。べたべたとわかりやすく細やかなのではなく、見てないふりして全部見てるし、あっち向いて別のことをやっているようでも、耳はかなりのことを拾っていることにふとした機会に驚かされる。職員さんたちはその個性が生かされながらも、その親分の細やかさを知っていてついていってる。つまり職場としても非常にうまくいっている現場だと思う。そして娘はその親分のすぐ近くに日常にいるのだから、そのあたりでストレスフルになることがあれば、とっくにそのさまは露見しているはずというところだと思う。
利用者さんとの関係でストレスフルなことは無いのか、というところで。周囲との関係でストレスになることがあるのならば。学校行ってる時にとっくにハゲてますわというところはある。怒涛の思春期の波に追い込まれる王子様たちにずいぶんと鍛えられた経験はある。痛い思いも怖い思いもずいぶんしただろうが、相手に敵意をもたず相手の個性を許容しながら笑顔で処理していった様は見事なことも多かった。それに無理があったならばとっくに吐いたかハゲただろうというのが正直なところ。しかし、彼女はあの頃大人だっただけだった。
彼女の周囲の人間関係に、どうにか原因を絞り出すとするのならば。娘は現在の作業所に入って、生まれて初めて女の子とのトラブルというものを経験した。その小さな手の甲にうっすらと血が滲む程度の4つ並んだ爪の痕をつけて帰ってきたのはまだ夏の始まりだった。その爪の痕は、自分で手を引っ込めずに相手にされるがままに手を渡した状態でいたのがよくわかった。そのあとも同じ相手と、ちょこっとバタバタとはあったかな。もう無くなったみたいだけれど。
生まれて初めての女の子とのトラブル。男の子とのトラブルとの違いは、周囲がすぐに気づけないこと。ドンとかバタンとかってのは目立つ。でも、叫ばずにちょこっとなんだかんだ言ってギューとかって、角度によっちゃ他者には見えにくい。
今までのトラブルとの違いは、相手の知的障害のレベルの差もある。要するに、重い知的障害からくる感情の乱れや波からくる暴力ではなく、娘より知的レベルの高い年上の女の子からのアクションで。このあたりも娘には難しかったのかもしれないとも思う。
なんだかんだ言いつつ、女の子が幼児期や小学生の低学年の時期にやってるようなトラブルには見える。年が近い姉妹ならすったもんだのきょうだいケンカの中で軽く経験している程度にも見える。しかし娘はなにしろきょうだいケンカというものを経験していない。普通の子にまみれた生活をしていた小学生の時は、実にたくましい女の子と仲良しだったのでこうしたことは起きるスキも無かった。
そもそも問題やトラブルを自己解決したいキャラをもっている娘。今回のことは彼女の知的能力で考えるには、ちと難しかったのかもな、とは思った。大人になってからの幼稚なトラブルは逆に難しいことなのかもしれない。まあでも、超えるしか無いんだけどね。本当に今回の「毛」に関してがそこにあるのならば。周囲で勝手に思ってるだけで真相は不明なのだけれど。
薄くなった分け目を見ながらどっきんこどっきんこしていたカーチャンですが。かわいらしいヘアピンをいっぱい買い込んで、もうね、あとは生やすしかねーわな、と、どかんとかまえてみようかと思うころには、娘はどかんと元気になってきた。
多少の元気では、わたしも作業所でもなかなか信用しない。この人はね、人に気遣いを出すのもかなりの腕前で、「相手に悟られないように元気そうにしてみせる」なんてのはかなりのお手の物。その「かなりのお手の物」テンションをずばりと見抜ける職員さんが複数堂々存在してるところも信頼が高い。いや、マジな話、教員の方々でぜんぜん気づかない人もけっこういたからね。で、わたしもその「気づく面々」も(どうやら本気で元気みたいだ…)と思ってきてる。
ダウン症者の成人期の心理的問題というものが起きる可能性の話は、ダウン症の子どもをもつ親にとっては「将来の不安」として常にちらちらと出てくるもので。毛が薄くなっている部分を見つけたときは、なんか足元がぐらんぐらんするほど(うわ〜〜)と不安で動揺したけれど。今はかーちゃんもなんかこう、腹が据わった。娘の髪の毛見てどきどきしてると、まあ神経細やかな当のお嬢さんに労られてしまって本末転倒になりそうだしね。ワカメとか昆布とか、いっしょにばくばく食べることにでもしますわ、わっはっは。という心境にたどりついたとこでございます。