リツエアクベバ

satomies’s diary

ムカデ、ゲジゲジ、カナヘビ

 わたしは都会の子です。ムカデ、ゲジゲジなんてものは言葉でしか知らなかった。カナヘビに至っては、言葉すら知らなかった。ああそうそう、ムカデは「となりのトトロ」のエンディングの映像で知ってたな、あのにょろにょろと八の字描いて動くヤツ。もっとも「となりのトトロ」時点では、姿と名前が一致してなかったけど。

 -ムカデ
 -ゲジゲジ
 -カナヘビ

 今はね、知ってるよ。全部ナマで知ってるよ。夫の実家は家の隣が神社の敷地のはずれ。隣が山のようなモンだよ。うちはさ、裏が山だよ。写真は家の北向きの小部屋の窓を開けたとこからすぐの景色。窓の景色がコレ。山ですね、まったくもって(春は堀立てのタケノコが食える)。で、出るんだよ、変なものが。
 なんだよソレ。聞いてね〜よ。
 いや、聞いてはいた。でも日常とするのに時間がかかった。なんせ虫ひとつだって、図鑑やペットショップで見るのが普通のような都会の子だったんだから。
 カナヘビは娘が小学生のとき、周囲の子どもがよくつかまえてた。近所の公園に娘を連れて行くと、周囲のガキ共が娘を連れだして遊んでくれるかわりに、手のひらにカナヘビを乗せられた。「コレ持ってて。逃がしちゃダメだからね」。
 ぎゃ〜〜、ぎゃ〜〜、ぎゃ〜〜〜〜、と叫ぶわたしにガキ共は大笑いし、乗せる匹数を増やしたりなんぞしてた。
 でも今は、カナヘビつかまえて手の上に乗せて撫でてるようなガキは近所にいなくなった。新しい住宅とマンションが増えて、それと共に「町の子」っぽい子が増えて、「田舎っぽい子」が激減した。娘と息子、たった3歳しか違わないのに、周囲の子の様子が全然違う。兄や姉がいる「田舎っぽい子」と、転居してきた長男長女の「町の子」。現在世代交代中なんだろう。「田舎っぽい子」は集団の外遊びがうまくて、異年齢集団のボスがかっこいい。「田舎っぽい子」は娘のような子どもに対してものすごく柔軟で、助けられたし楽しかったな、と思う。こうした子どもの特徴って感じの世代交代は淋しいけれど、まあ仕方ないね。
 周囲の環境がそんな風に変わっても、でもうちの裏が山だ、ってことは変わらない。山の向こうがすっかり切り崩されてでかいマンションが建って、景色がすっかり変わったってことはある。山ひとつ無くなったんだから。でも、うちの裏が山だってことには変わらない。だから「変なの」が家の周囲に「出る」ってことは変わらない。
 6月頃、毎年夫が家の周囲に木酢液をまく。家の中に「変なの」が入ってこないように。だから家の中にはほとんど出現しない。特にゲジゲジは見なくなった。でもムカデは時々。あるひとつの部屋の隅の方からにょろにょろと、不気味な赤い部分を主張しながらね。
 あるひとつの部屋。それは台所の真裏の北向きの小部屋。細長い四畳。裏が山。
 今朝、にょろにょろにょろ、とムカデが出現。ぎゃあああああああ、と思うが戦わなくては。たこぽんのようにデジカメ持ってくる余裕なんて無いよ。ぎゃああああ、と思いながら叫ばないのは息子が走ってくると騒いで面倒だから。トーストが入っていた空のビニールを持って走ってきて、ぎゃああああと思いながら誘導。窓の外に袋ごと投げる。それが精一杯。
 よくやったわたし。よくやった自分。エラいぞ。
 夫は今日は出勤、不在。彼はムカデを見つけると、捕獲し、外に持っていってぱちんと頭の部分を切り落とす。頭の部分はささささーっと逃げる、動かぬ胴を残して。生物は脳で動いてるんだな、と実感する。実感するけどね、単独では一生できないと思うよわたしは。今日は帰宅したら真っ先に報告してほめてもらいたいよ、格闘してとにかく外に放り出したってことだけでね。
 今日は再度、家の裏に薬まく。絶対まく。何度も何度もまいてやる。もう戦いたくね〜よ。