リツエアクベバ

satomies’s diary

落とし物

昨日出かけて、家に帰るとき。人通りの少ない住宅街の細い道を歩いていて。
わたしより少し上くらいのご婦人が、家の柵にジャージのズボンをひっかけていた。

それを視界に入れながら、そのまま通り過ぎようとして。そのご婦人がわたしになんだか話しかけてるともなく、なんかしゃべっている口元が見えた。耳にイヤホンで、その程度のボソボソ声は全く聞こえてなかった。完全ワイヤレスイヤホンなので、先方はわたしの耳が聞こえていないのは気づいてないようで。申し訳ないので、わざとらしくイヤホンをはずしてからご婦人に笑顔を向けた。
(すまん聞こえてなかった、ちゃんと聞く)の意思表示。

要は。ご自宅の目の前にジャージのズボンが落ちていたんだそうだ。洗濯物が飛んでくる位置でもなく、どうやって落としたんだ?この道にと不思議になる。たぶん、中学か高校の部活のジャージの下だ。体操着にしては黒字に赤のラインがしゃれていた。

「ここにかけておけばいいわよね」と、ご婦人が言う。はい、そこで大丈夫かと。道を通るときにちゃんと見える。

「困りますよね、そのままにもしておけないし。そうかと言って捨てることもできないし、届けるといってもどこに届けていいのかもよくわからないし」と、わたしが言う。

その位置からは中学も高校も遠い。学校の特定もできないし、大人のトレーニングウェアかもわからん。

「捨てる」という言葉に、ご婦人が反応した。

「1週間経ってもそのままだったら、捨ててもいいかしら」

いいと思いますよ。1週間は妥当かと。仕方ないですよ。とわたしが答える。

「そうね。どうもありがとう」と言われて、「いいえー、それでは」と言い、わたしは歩き出す。いやお礼を言われることはなんもないんだけど。

自分ちの目の前に、子どものサイズではないそこそこの大きさのジャージがごろっと落ちていて。どうしたもんかいのうと、思ったタイミングで、ちょうどわたしが通りかかったということらしい。
どうしよう的なところで、オッケーオッケーみたいに同意されてよかった的なことなんだろうなと思った。

今日はそこを通っていない、明日通ってみようかな。なくなってるといいな。