駅前で南伊豆の産直の出店があり、早生のみかんが並んでいた。真っ青で皮が固そうだった。
夫とよく話す。昔の早生のみかんは酸っぱかった。とても酸っぱかった。秋の運動会といえば、あの酸っぱいみかんだった。
今の早生のみかんは青くても甘い。あの酸っぱいみかんが食べたいねえ。
特に美味いものでもない「昔の味の食べ物」を恋しがる。わたしたちは立派に年寄りになっている。
真っ青で皮が固そうなみかんを前にして、(これは酸っぱいかな)と期待する。
隣にいた年配のご婦人が、わたしに話しかける「これ、甘いのかしら」。
「酸っぱそうですよね」と、わたしが答える。わたしたちは期待するものにずれがあるなと思う。
買って帰った。食べた。甘くはないが、すごく酸っぱくもなかった。非常にちょうどよく、とても美味しかった。このくらいの「やたらに甘くはない」早生のみかんをまた食べたい。