リツエアクベバ

satomies’s diary

五日目

舅の点滴、五日目。

9時半過ぎに夫が実家に行く。しばらくしてバタバタして帰ってくる。
「オヤジがよくない」

看護師さんがきてる。呼吸が苦しそうなので酸素の量を増加。そのために精製水の追加が必要になった。買いに行くと言う。

「いや、それはわたしが買いに行く。あなたは戻ってください」と言って夫を実家に戻す。時計を見てドラッグストアの開店には早いが、まあ店の前で待とうと思ってすぐに出る。

駐車場で開店を待ち、店に入って「精製水が欲しい」と言う。コーナーに案内されて言われたのは「売り切れ」。そうですかと答えて二軒目に回る。二軒目で「精製水はどこですか」と聞き、案内されるときに少し嫌な顔をされた。レジで気づいた、わたしはマスクをしていなかった。

家に戻り、娘に声をかけてから実家に行く。手を洗い、舅の元に。酸素の機械の音が強くなり、増加させたことがなんとなくわかる。おとうさんおとうさんと声をかけると、おおおまえがきたかと舅がゆっくりうなづく。苦しいのか苦しかったのかと思いながら、胸のあたりをさする。

おとうさんおとうさん、あなたの息子がそばにいるよと声をかける。声をかけて、夫を近くに引き寄せる。男親男子どもは、ううむ世話が焼けるぜ。舅の顔の近くに座らせて、わたしは離れて義妹と話す。義妹と話しながら夫を見て、また夫のところに戻り夫の腕をそっとつかんで舅の腕に掌がいくようにする。そうして、またわたしはふたりのそばを離れる。夫が素直に舅の腕をさするのが視界に入る。ふたりの世界よ、つながれと思う。

義姉に電話した、と義妹が言う。すぐにどうとかはわからない。ただ呼吸が苦しくなったので酸素を増やしたと伝えたとのこと。しばらく義妹と話し、夫を置いて家に戻る。それから1時間くらいして、夫が家に戻る。落ち着いている、と夫が言う。

わたしは。ザワザワザワザワして落ち着かない。二時頃、そろそろ娘を連れて買い物に行くタイミングで。その前にと実家にすっ飛んでいく。

シューシューと酸素が送られて、舅が眠る。傍で義妹が横になっている。ここのところ、彼女は3時間くらいしか続けて寝ていない。

落ち着いてはいるんだろうけれど。少しずつ、昨日と違う。何がどう落ち着いているとかの、判断する、感覚的データが、自分たちにないんだ。と、ふたりで話す。でも。何をどうしようとか何もできない。痰の音がすれば義妹が痰を機械で引く。それ以外に何も起きなければ、明日の8時に看護師さんがくる。くらいのこと。

わたしは。少し離れたソファに座り、ひたすら舅のことを眺める。眺めていなければどこかにいってしまいそうな、そんな気持ちがする。

「落ち着いているから、買い物にいっておいで」と義妹が言う。買ってきてほしいものをわたしに言う。「大丈夫、落ち着いているから」と言ってから、「今のうちだよ」と言う。

買い物から帰り、買ってきたものを夫に届けてもらう。舅が来てほしいのはわたしではない、夫だから。