リツエアクベバ

satomies’s diary

四日目

舅の点滴、四日目。

午前中、夫が行く。昨夜、夜中に痰がからまり吸引をしたとのこと。今は眠っていた。そうかと思う。

午後、息子を連れて行く。娘はわたしがパートに行くときに午前中2時間ほど実家にいる。おじいちゃんとずっと、いつも会っている。ので、息子だけ。

「おとうさん、おとうさん。ひろ、連れてきたよ」

舅は目が覚めていたけれど、目は開かない。開いていても、舅の視力はずいぶん前から低下している。入院したときのスタッフの申し送りメモに「目がほとんど見えていない」といつもあった。

「おとうさん、おとうさん。ひろ、連れてきたよ」

舅がゆっくり、でもはっきりとうなづく。

「おとうさん、ひろがあげたお布団、ずっと使ってくれてありがとうね」

舅がゆっくり、でもはっきりとうなづく。

耳も遠い。意識も遠い。近くで大きな声で呼びかける。息子はわたしのそばで、何も言えないでいるけれど、でも彼なりに祖父を精一杯感じているのがわかる。

大正生まれの祖父で、息子が生まれたときはもう70を過ぎていた。おじいちゃんおじいちゃん、というより、少し遠目に感じ。でも節目節目に成長を喜んでもらったことをわかっている。
就職のお祝いのときに、お祝いと一緒に舅は宝くじを息子に送った。その中に小額ではあるが、末等ではない当たりがあった。息子は初任給で祖父に質の良い夏布団を買った。今、その布団は、息子の目の前にある。

何回かやりとりをし、舅ははっきりとうなづいてくれ。そしてまた、寝息をたてて眠りに入った。

義妹と話をして、実家を出る。
「あの布団、あれ買ってよかったね」と言うと、息子は強く「うん」と言う。
顔をあげ、目が泳ぐようにパチパチする。ああ。思い、を抱えたなと思う。

今日、深くうなづいた祖父を忘れるなよ。と、わたしは息子に思う。