リツエアクベバ

satomies’s diary

忘れていくこと

普段着の引き出しに、着古したTシャツがあった。なんでしまってあるんだろう、と思って使い捨ての雑巾にしようかと取り出した。

あっと思った。忘れていた。

そろそろ処分かな、と思いながら寝るときに着ていた。ボロボロだけど、生地のちょうどいい薄さとか、あせているけど好きな色だとか。なんとなく何度も着ていた。

猫が。死んだ夜に着ていた。腕の中で死んだ。左腕を枕に死んだ。猫が棺で亡骸になって。シャツのにおいを嗅いで、そして洗った。洗ってから何度も着た。何度も着て、左腕を眺めた。

何度も何度もそんな夜を過ごして、それからしまった。

忘れて、いたなあと思う。忘れるんだね、忘れるんだなあ。

そんなことを思いながら、シャツを抱いてちょっとだけ泣いて。それからまたしまった。いつか思い出さずに捨てるんだろう。

骨はまだ白い包みで部屋の中にある。いつ埋葬するかとか、もう誰もわたしに聞かない。