リツエアクベバ

satomies’s diary

ウィズ コロナ

娘が「あぶない」と言う。何が?と思っていると「いーるす」と言う。
(「いーるす」ってなんだ?)と思いながら、曖昧に微笑んでわかったようなフリをするわたしに、真剣な顔で「いーるす」と繰り返す。それからまた「あぶない」と言う。

ああ、そういうことかと。わたしは休んでいた通所の復活の話をしていた。娘に次の火曜日には事業所に行くんだよ、と。それを聞いて喜んだ娘のその喜んだ顔をまた見たくて、わたしは娘に通所の話をしていたんだ。

それに対して娘は真剣な顔で「あぶない」「コロナ」「いーるす」と言う。「いーるす」とは「ウイルス」のことだ。

なんだよ、「ウィズ コロナ」って。
なんだよ、「新しい生活」って。
わかりにくいよ、うちの娘のような知的障害ある人間には。
なんだよ、そんなことも気づかなかったのかよ、わたしは。

テレビはコロナコロナと言い続ける。
みんな神妙な顔で「コロナ」と言う。
店のレジのビラビラもそのままだし、出かける時はマスク必須だ。
娘に見える世界は何も変わっていない。

「あぶないからおうち」から「また通所が始まる」になる理由も基準も、娘には理解は難しいだろう。わかったような気でいるわたしたちだって、全ては手さぐりみたいなものなんだから。

「おかあさんと職員さんがあなたを守る」

わたしが娘に渡してあげられる情報はこれだ。

コロナウイルスは終わってない」
「おかあさんと職員さんがあなたを守る」

娘、理解したもよう。とりあえずほっとする。
「だからいってもいいんだよ」
娘、笑顔でうなづく。とりあえずほっとする。