リツエアクベバ

satomies’s diary

娘の歯医者、息子の歯医者

娘の歯科受診について。障害児・者の予防的歯科に熱心な歯科医院にずっと通っていた。こちらが障害児・者に熱心に関わるのは。院長が元々障害児・者の歯科治療センターのようなところに勤務。全身麻酔をかけて治療を繰り返すことに疑問を感じていたということが発端だったそう。
この歯科医院、処置のとき、どんなことでも「10数えながら」やる。「我慢する時間の見通しをたてさせる」ためだそうだ。いーち、にー、とゆっくり数えても「10」で終わらない処置の場合は、10を一区切りに繰り返す。麻酔をかけた虫歯治療もうまくこなせていて助かってた。
しかしこの歯科医院、近くない。まあ遠くもないが車で30分くらいかかる。それとものすごく混んでいて、なかなか予約が取れない。なんとなく足が遠くなって、いかなきゃいけない頻度の間隔がどんどん遠のいてしまった。
あるとき。近所の自分がかかっていた歯科医院で、歯科医が10数えながら処置をする声が聞こえてきた。そばにいた衛生士さんに聞くと、子どもの治療でああいう風にすることがあること。それならば、と。うちの娘もお世話になれないか、とお願いしてみた。
これこれこういう風に10数えながら関わってくれ、まずは歯磨き指導と健診だけでいい、紹介状ももらってくる。虫歯等処置が必要な場合は先方にまた戻ることも考える。こうして近所でお世話になることが始まった。
40代になりたての歯科医師は、とても丁寧に優しく関わってくれる。娘は先生が大好きだ。少しずつ処置を進めて、残念ながら作ってしまった虫歯の処置に対しても問題ない。歯科医師が「これもできた、これもさせてくれた」とうれしそうに報告してくれ、またそれがどんどん増えるととてもうれしい。なにより歯科医師自身がすごく喜んで「させてくれた」という言い方をすることが本当にありがたい。
この歯科医院、何人かの歯科医師が曜日別に担当している。娘の担当医はわたしの担当医で木曜日の先生。先日、土日の予約を取りに行った。熟知の受付の女性に言う。
「あのね、わたしにはもうひとり子どもがいるの。子どもではなく大人なんだけれど。この子の予約を取りたいの、土日で」
「それでね、お願いがあるの。ドクターの希望。『優しい先生』をお願いしたいの」
「あのね、もう大人なんだけど。この人、医療系ビビりなの。それで歯医者さんなんだけど。医療系ビビりだからずっと娘の歯科医院に一緒に行ってたの」
「娘がこっち来ちゃったでしょ。だから息子、歯医者に行けてないの」
娘もかかっているが、実は夫もこの歯科医院に世話になっている。彼は土日に受診。この歯科医院は水曜以外休診が無い。つまり、夫もこの歯科医院の歯科医を何人かなんとなく知っている。
「あのね、夫と言ってたんだけど。毛がいっぱい生えてる先生、土曜日にいたよねって。あの先生優しいよねって」
にこにこ聞いていた受付の女性がここで爆笑した。涙流して。「毛がいっぱい生えてる先生」のことがすぐわかったから。
体毛、濃いの。手にいっぱい毛が生えてるの。マスクもあるし、口あけて上向いてるし、歯科医の顔なんてそんなにはっきり覚えてるもんでもないと思う。でもこの先生、手やら腕やらにいっぱい毛が生えてるの。色白な手と腕。
「取れる土日で最短は〇月×日のここです。残念ながらその日は毛がいっぱい生えてる先生は来ないんですが、優しい先生が担当になるように手配します。スタッフにも優しい配慮をするようにしておきます」
「歯科が苦手で何年も来られなかったという方は珍しくないです。対応するので大丈夫です」
まあ心強い。スタッフがなんとなくワクワクしてるようなムードがある。「ちゃんと大人ぶらせてくれ」とはお願いしたので本人にはバレないでほしい。ちなみに「優しいドクターを希望、と要望出していい、いやむしろしてくれ」と本人に頼まれたのでわたしは頼まれたことを忠実にやっただけだ。
おねえちゃんのスタッフたちはワクワクで当日を迎えるんだろう。モテる子ではないが、とにかくおばちゃんとおねえちゃんにはウケのいい外見をしている。ちょっとかわいい子が大人ぶった顔をしてやってきた、と、さぞおねえちゃんたちは楽しめるだろう。かーちゃんは非常に楽しみだ。息子は今月24歳になる。