リツエアクベバ

satomies’s diary

ゼラニウム

今朝、ゴミ出しに行ったときのこと。数軒先の家の玄関先の小さな庭に、真っ赤なゼラニウムがたくさん咲いているのがふと目に入った。

(うちにあるのと同じだ。ゼラニウムはあまり地植えにしないらしいけれど、ここの家は鉢植えじゃないんだ。地植えでたくさん咲いているなあ)

最近急に初心者ガーデニングに目覚めているわたしは、同じ品種の季節一周の経験が無い。地植えにして山のように今花を咲かせているゼラニウムが、冬どうなるのかよくわからない。

ここの家は、玄関先の小さい庭によく計算された配置でいつもきれいに花を咲かせていた。このゼラニウムも昨日今日植えたものじゃない。どうやってこうやって上手に地植えで季節回せるのか、できるものならご教授いただきたかった。できるものなら。

この家は、今年の始め頃から、もう誰も住んでいない。お話し好きなおばあちゃんが一人で住んでいて、死んでしまったから。お話し好きで、噂好きな、よくいる近所のおばあちゃん。めんどくさい話多かったから、話しかけられてもわたしは笑顔でにっこりと長話NOな後ずさりばかりしてた。ゼラニウムの話、聞きたかったなあ。タイミングが遅すぎた。

夕方、業者の人が来た。木曜から近所で解体工事がある。工事車両が出入りする、ご迷惑かけますのご挨拶。「ああAさんとこの工事ですね、あそこの位置だと車はこっちからこう入ってきますね、狭い路地なので工事車両の駐車はこことかあそことか避けてください」とかなんとかなんとかかんとか、わたしは答える。

とかなんとかかんとかかんとかなんとかで、これこれこうで…。と言いながら、「あ!」と、わたしの声が止まる。「ううう」と声にならない声が喉から出る。

「どうされました?」と、業者の人。たいがいこういう時はおっさんが来るのだけれど、今日はスーツ着た女性だった、30代くらいの。急に変な声を出したわたしに「どうされました?」と優しく聞いてくれた。

「解体工事、ですよね。Aさんとこで、家を壊す、んですよね」。「一人暮らしのおばあちゃんがいたんです。今日、その方のことを考えていたんです」。「工事、ってことで、これとあれと、頭が別に動いてたんですけど、今急にそれがつながったんです」。「ごめんね、変な声出して」。

「いえ」と言ってから、小さく優しくほんのちょっと口角上げて業者の女性が答えた。「お気持ち、動きますよね」。いい人だ、この人。挨拶周りにうってつけだぞ、この会社、エラいぞ。

今日、なんとなく、ゼラニウムが目に入ったのは、お別れの合図だったのかなあ。