リツエアクベバ

satomies’s diary

高齢者とパソコン

義妹から電話。舅がずっと使ってた日本語ワープロが壊れたそうだ。パソコンを買おうと思うが、欲しいのはワープロ機能のみだと言う。プリンタも欲しい。10万くらい出そうと思うが、使いこなせるだろうかとの話。ワード画面を見せるためにノートPCを持って即訪問。
舅が長いこと使ってたワープロは、キーボードの操作キーがわかりやすい。操作キーの位置も覚えて使ってきたと思う。しかしすでに日本語ワープロの時代は終わってる。店にいけばパソコンしか売ってない。パソコンにワープロの機能はあるが、ワープロで存在したキーボード上での操作を示した日本語表示は消えるし、初めて覚えるマウスの扱いもある。そうした変化に対しての心理的ハードルは高いだろう。でもそこを超えてしまえば充分いけるだろうと思った。思ったんだけれど。
でも…。ノートPCを抱えて行ったわたしが(そうか…)、と思ったこと。舅は高齢者なんだ。世の中ではシニアのパソコン利用とか高齢者のiPad使用とかって話題はけっこう出てくるようにはなったけれど。高齢者には高齢者特有のハードルがある。舅のマウス操作とわたしの実母のiPad操作で、同様の問題点が存在してる。やっぱりそこにいきあたった。
それは「振戦」というヤツ。加齢からくる手の震え。なんかのふりとかネタとかっていうような、なんかわざとぐらんぐらん揺らすほどの震えってほどじゃない。本当にかすかな動きで非常に細かく動いてしまう。
そのことに気づいたのは母のiPad 使用だった。母がiPadを使っていて「画像が保存できない」と言っていたこと。「画像に指をおいてれば保存ができる画面になるから」とか何度か言ってたんだけど「できない」と。電話で聞いてはいはい答えてて実家に行った時に再度やってみせた。そして本当に何の気なしに「じゃ、やってみて」って言った。おかしい。母がやると画面が簡単に動かない。指はちゃんと画面に置いているのに。
なんで?って思って自分の指でやってみる。画面は思い通りに動く。母が同じことをやる。うまく動く時と全然反応してくれない時がある。その時によって画面の動きに確実に差が出てる。おかしい。これは「やり方がわからない」と訴えて当然だと思う。
もしかしたら。と思って、母の指をわたしの手で持った。母の指をマウスのように動かして、画面を指定した。簡単に画像保存に画面が動いた。それから母に自分でそれをやってみるように言い、わたしはテーブルに顔をつけるようにして、母の指と画面の接点あたりを凝視した。母の指は画面の上でかすかにかすかに動いていた。その動きに対してiPadの画面は反応したり反応しなかったりということになっていたのか、ということがわかった。「あなたの体が年をとってしまったからだ」ということを伝えるのはせつなかった。「画像保存の時は人差し指で画面を突き刺すように指定してくれ」と伝えることにした。これだとうまくいく。画像保存は解決した。でも、そういうことなんだな、ってのは自分の中に残った。ちなみに実母は78歳。iPadでネットの検索をしたりアプリを使ったりする。一番重要なのは大きな画面でメールを使いこなすこと。オーストラリアに長女がいるという状況でこれはとても重要な意味がある。3/11の時も揺れの直後に姉にメールを入れていた。画像保存がどうのってことはとりあえず二の次にできるほどのことだとは思う。
さて今回は。日本語ワープロを失った舅がパソコンに向かおうとしてる。ただそれが自分にとってどんなものになるのかもよくわからない。その状況でノートPCをもっていってワード画面を見せた。そして「入力した文字列の文字大きさを変えたり、移動したり」ってのを舅にやってみせてた。パソコンでワードを使うのなら、こうやってマウスを動かすことに慣れていくんだよってことだと伝えたつもりだった。

マウスを操作して指定したい文字列の開始位置にもっていき、マウスの左の部分を押しながら文字列をなぞる。

これがスムーズにはいかなかった。これは母の画像保存と同様のことかもと思って舅の人差し指を見ると、かすかな動きで「押しっぱなし」にしていることができてなかった。
もちろんコツをつかめばいいんだと思う。でも機械を覚える時に「右ってすれば右、左ってすれば左」っていう指示と反応の正確さは重要な意味をもつ。「右って自分ではしているつもりでも、そこに細かいコツが必要で、その細かいコツの規則性が自分でなんども不確かな波の中にいつづけなければわからない」って、かなり不安なことだと思う。やったことがあることなら、それはわかるかもしれない。でも、初めての動作でこんな不確かさと向かい合うのは、そりゃたまらんことだと思う。
ふうむと思いながら検索かけてて、そうかこういうものがあるんだなと思ったもの。

高齢者にも入力が簡単に出来るキーボード・グッドデザイン賞中小企業庁長官特別賞受賞/イワタデザイン

さて舅。慣れない機械に向かい合うための予算はプリンタ込で10万円だそうだ。全面的にサポートすると言って、ふと(この手もあるな…)と思ってひとつ提案をした。「それができるなら一番ありがたい」と舅が言う。その提案でまず調べてみるから待っていて、と。
じゃじゃん。買っちゃった。

【楽天市場】NEC ワープロ 文豪MINI5 UV:CREWBAR LAND

↑のお店ではないんだけど、要は「舅が今まで使い続けてきた機器と全く同じものを中古で買った」ということ。1993年発売の機器なので中古で買って、これから何年使えるかわからない。でも壊れたらまた探すさ。慣れ親しんだ機器は舅に寄り添い続けてくれるだろうと思う。ちなみに舅は87歳。
新しい機械を習得していくのが好きな高齢者もいるかもしれないけれど、慣れ親しんだものが存在し続けて欲しい高齢者もいると思う。資本主義社会は後者をないがしろにしていくのは淋しいもんだとも思うが、探し続けることができるインターネットはありがたいものだと思う流れだった。