リツエアクベバ

satomies’s diary

小さな中国のお針子

何年前だったか、新聞を読んでいて(この映画、観に行きたいな)と思った。新聞に大きく広告が出ていて、ストーリーが詳しく載っていたのを読んで興味が引かれたのだった。たくさんの映画館で上映されるのではなく、関東でも日程をずらして4館ほどの上映でしかなかった。子どもが学校に行っている間に観に行ってこられるか上映スケジュールと自分の時間と照らし合わせてずいぶんと考えた。でも結局行けなかったんだな、この時は。
いつか観たいな、観られるかな、とか思いながら、でもすっかり忘れていた。レンタル屋のレンタル半額の日に、並んだDVDの中で、その、何年も前に「観たいな」と思っていた映画のタイトルが浮かんでた。おうそうだ、これだこれだ、これが観たかったんだといそいそと借りてきて観る。

小さな中国のお針子 [DVD]

2003年の1月の上映か、と、その「観たかった時」がいつだったかも忘れてた。ついこの間のような気もするけれど、19歳と16歳の2人の子どもがまだ小学生だった時期と思うとかなり昔のような気もしてくる。なんで観たかったのかも忘れてたんだけど、まあ観ればわかるだろうと思って観たら思い出した。新聞で紹介されてたストーリーのラストがね、なんだかどうしていいかわからないような気分になったんだ。だからちゃんと観て、本編のラストをしっかり味わいたかったんだ。
時は文化大革命の時代のお話、知識人や資産家が国によって攻撃を受けた時代の「いいとこの坊ちゃん」が2人。文盲が普通という辺鄙な山里に「再教育という名の労働」のために送られてくる。この「いいとこの坊ちゃん」たちが慣れない労働にヒーヒー言いながら頑張る毎日。でもこの映画は、この背景から推測されるような「苦労したけど頑張りました」とかじゃないんだな。いや、がんばってるんだけど。
かつてこの時代に「辺鄙な村で実際に再教育を受けた」1人の中国の青年がその後、フランスに留学。「文学が人に与える影響」のお話を、文革の再教育の場を舞台に青春小説として「フランス語」で書いた。この小説『バルザック小さな中国のお針子』はフランスで40万部のベストセラーになり、世界30ヶ国で翻訳。『小さな中国のお針子』はその映画化。ちなみにタイトルから「バルザック」を抜いちゃったのは邦画。わたしはバルザックが付いたままでもよかったと思う。
この映画に出てくる「小さな中国のお針子」とは、「いいとこの坊ちゃん」2人に愛されるべっぴんさんのヒロイン。おじいちゃんが仕立て屋さんで彼女は「小さなお針子」。この地域ではごく普通の「文盲」だけれど、知識欲旺盛な輝く美少女。坊ちゃんたちが「あの女の子に知識を与えて輝かせよう」プロジェクトを愛情たっぷりに遂行してたんだけど、べっぴんさんの「成長」は坊ちゃんたちの想定の範囲外まで行ってしまう。ラスト近くでこのべっぴんさんが一言「バルザック」というシーンがあり、その時の表情がとても印象的。
ロケ地の湖南省の北西部の山中の光景は非常に美しい。そして主人公になる「いいとこの坊ちゃん」青年が美形。特にルオ役の男の子は中国ではアイドルらしい。

まあわたしの好みはなんたってマーの方ですよ、マー。ぬぼーっとでっかくて、ただ見つめてて、要所要所で泣きたいくらい優しい。で、このマーを演じた青年、劉菀(リウ・イエ)。なんとこの方、大好きなメリル・ストリープと共演してた。日本未公開作品ですって、でもDVDはあるそうだ。次のレンタルはコレだな。

アフター・ザ・レイン [DVD]