リツエアクベバ

satomies’s diary

新しいスイッチ

息子の熱烈志望校の前期入試の倍率は高かった。過去、もっと高かった年度もあった。それよりは低いけれど、やっぱり今年も高かった。この学校は、前期入試の参加率が高い。単純計算で「前期志願者マイナス前期合格者」という数値を出し、それに「後期参入組」の予想数値を足して後期募集数で割る。肩を落とすほど後期も「後期倍率としては」高くなるのが充分予想できた。だからこその「志願変更を考えるか?」という質問だった。
後期志願日は木曜と金曜。息子の中学では木曜を後期志願日としていた。前期選抜の志願は「少しでも早い番号を取りたい」と、かなり早めに家を出た。今度は「志願者のおおよその人数を早く知りたいから、自分の番号で予測できるように遅く出る」と言ってた。取ってきた受験番号を見て、(おや?)ってなことになった。その時刻ならもうちょっと番号が遅くてもおかしくないんじゃないか? もしかして? などと相互に言い合う。いや、甘い予測は後で痛い目を見るとも言いながら。
ネット上にある塾の「後期倍率予測表」が出た。やっぱりね、って感じだった。その倍率は、他校に比べてやっぱり高い方だった。今度は前よりも軽い調子で聞いてみる。「志願変更を考えるか?」
倍率は彼にとって大きくのしかかってくるプレッシャーみたいだった。今度は以前より重いムードを漂わせた。重いムードの彼に「志願変更で、ランク上げて○○校にするかい?」と聞いた。このかーちゃんはいったい何を言い出すんだ?という感じで息子がわたしを見る。
中2の時に、彼が最初に塾のテスト用紙に志望校として記入したのが、その、現在の熱烈志望校よりランクが上の学校だった。それを知ったときに、息子には悪いが思わず吹いた。「なんて身の程知らずな。そこはどうにも無理だよ。そうか、そこがこれこれこういう意味で入りたい学校と思うのなら、同様の学校を探してみよう」。それで見つけたのが現在の熱烈志望校だった。学校を知れば知るほど、彼の志望の気持ちは高まっていった。その後のがんばりの積み重ねでジャンプしても届くか届かないかというくらいだったその学校に、手を伸ばしてそして失敗しなければ手が届くだろうという現在に至ったという展開。そしてその、一番当初の彼が見つけた高校は、今は前よりも近くなった。なんだかんだ言いつつも、いまだに息子は模試の志望校記入欄にそこも書くことはやめていなかった。安全圏にはとても遠いものの、可能圏に入ることも増えた。そこはね、なんと予想倍率が他校の水準より低かったんだ。「今の熱烈志望校の倍率が怖いのならば、いっそのこと、周囲がもっとあっけにとられるようなチャレンジでもしてみるか? ここ、今年の倍率多分低いよ?」
とんでもない母の言葉に息子は唖然とする。ワンランク上ってどころじゃない、ツーランクかスリーランクくらい上の学校だ。「あはは、ゴメン、わたしが悪かった。どんなに倍率が低くても、最初にはじき飛ばされるのがアンタかもね。それでもってあっと驚くミラクルが起きたとしても、3年間劣等生で行くのはキツいよな」。
息子が笑う。そして言う「志願変更をするつもりは無い」。そうか、わかった。おとうさんが言ったね、ここまで頑張ってきたってことが大事なんだよ。息子は強くうなづく。
そんな予想倍率の話なんぞしながら、そして息子は数検受験の時に買った「マイ電卓」をたたきながら、自分でも予想倍率の数字を出して「やっぱり高い」とうなってた。高い倍率にはじき飛ばされて不合格の文字を見たのだから、その迷いは当然のことだろうと思う。
では実際の本当の倍率は? 土曜の朝刊を待たずして、金曜の夜には後期倍率がネット上で出るはずだった。金曜の夜、倍率が出るはずのページを表示させて、時計を見ながら更新を繰り返す。「出たよ! 後期倍率」。息子がすっ飛んでくる。二人で心臓ばくばくさせながら、学校別に倍率が出ているPDFファイルを開く。
「やった!」。息子が叫ぶ。前期入試失敗者の中の十数人が、後期の志願にまわらなかった。この学校で「前期志願者マイナス前期合格者」の数値よりも後期志願者が少ない人数になることは、過去数年では存在していなかった。それが今年は起きた。倍率が予想したより低くなった。
まあそれでも他校に比べてけして低いとは言えない。それを言うと息子は「これだけあれば、志願変更でこっちに来るヤツはいないだろう、きっとコレで確定だ」。おお、そういう判断になるのか。
ランクが上の学校の倍率も見る。ふむ、やっぱり低い。「んでは、こっちはどうする? やっぱ低いぜ?」
息子が笑いながらわたしをどつく。「行きたい学校を受けるんだよ!」。ほう、そうか。自分の予想倍率より実際の倍率は下がった。そのことで息子のテンションはかなり上がった。最後まで結果はどうなるかわからんが、元気に挑戦するモードを完全に取り戻して、わたしはとても安心した。決戦の日まであと12日。