リツエアクベバ

satomies’s diary

臓器移植に関するメモ3

上記二つのリンクの内容比較。比較ポイントと思われる記述部に赤字。以下「生命倫理会議」の方を(倫理)と、日本移植学会の方を(学会)と記載。

  • 長期脳死」に関して
    • 1)厳密な脳死判定後にも長期脳死の実例がある、という事実が直視されなかった。【参議院参考人質疑で森岡正博参考人が指摘したように、無呼吸テストを厳密に実施して脳死と判定された子供のうち、3割以上が長期脳死になっていること、 2割は100日以上も心臓が動いていることが、ほかならぬ旧厚生省研究班の論文に明記されている。にもかかわらず、A案提出者はこの事実を長らく無視し、長期脳死は「法的脳死」ではないと主張してきた。】(倫理)
    • Q11 最近新聞で「長期脳死」のことが話題になっていますが、本当にあるのですか? → A11 新聞で報道されている「長期脳死」の事例では、正式な脳死判定が行われていません。すなわちすべての事例で無呼吸テストが行われていません。(中略)わが国の脳死判定基準では、脳死判定の必須基準をひとつでも満たさない場合は脳死と判定してはならないとされています。つまり新聞で報道されている「長期脳死」の事例は、実際には脳死ではなく、重症脳障害を意味します。(学会)
  • 虐待児の問題
    • 2)ドナーとなる子供への虐待の有無を判別する難しさが認識されなかった。【近年の日本では、子供の虐待が深刻な問題になっている。A案では、子供の脳死判定と臓器提供が親の代諾だけで認められる以上、それらは虐待の証拠隠滅になる可能性があり、子供の人権がさらに侵害される可能性がある。しかも日本小児科学会の調査によれば、大半の小児科医は虐待の判別に関して肯定的な見解を示していない。】(倫理)
    • Q12 虐待で死亡してしまった子供さんから臓器提供が行われることはないのですか? → A12 日本で脳死臓器提供ができる施設は、大学付属病院、日本救急医学会の指導医指定施設、日本脳神経外科学会の専門医訓練施設(A項)、救命救急センターとして認定された施設(約400施設)の4種類の施設(4類型)に限られており、救急医療に関して最も経験のある施設です。したがって、成人・小児を問わず、虐待によって傷害を受けた多くの患者さんを治療した経験のある施設なので、虐待を見落とす可能性はまずありません。(学会)

臓器移植に関してのもろもろはただでさえ難しいのに、こう比較ポイントがあるとなんともはあという感じがする。このQ&Aだけを情報の全てとするならばというところと比較文書を出してくるのとでは、文書から与えられる印象が全く変わってくる。日本は「和田心臓移植事件」の存在があって、移植医自体にもともと信頼が薄い土壌があったのだから、そこ抑えないとという感があるなあとも。このQ&Aが誠実なのか誠実ではないのか、わたしにはよくわからない。
脳死に向かう状態になっている人とその家族にとって、まず、というより希望することの全てが「救命治療」なのであって、「脳死による臓器提供への秒読みタイム」ではないわけで。臓器提供の意志を持つ人への医療の手が薄くならないか、という危惧を持つ文書にもなっているなあとも思う、「脳死臓器提供Q&A」。
A案が可決したのだから、「拒否」を示すことを前提に考えておいた方が安全ではないかという感覚を持つところも。「拒否」を示していれば脳死判定自体を断る権利は確保されるので、治療が打ち切られることはないだろうと。脳死判定さえされなければ「瀕死の病人」ということで生者としての権利は確実に持てる。「脳死臓器提供Q&A」でも「断る権利」について力説されている感はあった。A案可決で「断る権利」の時代に入るということなのか、という感想。それが移植医療の望んだことなのか、とも思った。