リツエアクベバ

satomies’s diary

臓器移植に関するメモ2

臓器移植に関するメモ」の続き。
「子どもの脳死」には「長期脳死」の可能性があり、脳死状態でも成長を続けるケースがある。長期脳死という状態になるかどうかは「医療により生かし続けてみなければわからない」。脳死に至った子どもの親が「お子さんをドナーに」という説明を受ける時には、長期脳死という可能性をも説明される必要があると思う。
脳死による心臓移植のドナーになるということは、生存の道が完全に絶たれるということを意味する。そこで疑問として出てくることは、「誰が物言えぬ子どもをドナーにするのか」ということ。

虐待被害児の「ドナー」

アメリカ在住の心臓外科が専門の医師である方のブログから一部引用。続きは是非本文にて。

小児臓器移植に関する雑感 / Life is Soooooo Good!
移植医療に関しては、臓器を必要とする患者数に対して臓器を提供するドナーの数が慢性的に足りない。たとえばアメリカの心臓移植の場合は、毎年ドナーの約 10倍の人々が移植を待っている状態だ。このドナーの数と移植を必要とする患者の数のミスマッチは、小児の場合にはさらに甚だしい。
移植手術の現場に身を置いていると、実に多くの小児臓器ドナーが虐待の被害者であることに大変なショックを受ける。臓器の摘出手術が始まる前にドナーとなった子供を見ると、痣や外傷だらけということが実に多い。これはどういうことかと傍らにいる移植のコーディネーターに聞くと、やはり思ったとおり虐待の被害者であるという。そんな悲しい経験を今まで幾度と無く繰り返してきた。
臓器摘出手術が始まり、痣だらけ、外傷だらけの小さな体の透き通った皮膚にメスを入れる。赤い液体が滴る。大変辛いことだが、この犠牲者の臓器が他の子供達の新たな生命となって飛翔するのだと自分に言い聞かせながら臓器摘出手術を進めてゆく。それでもやはり、辛い……。

被虐待児の脳死

虐待による脳死状態は、それが虐待からきていると判明するまで日数がかかる場合が存在する。親が嘘をついている場合もあり、脳死状態の心臓移植のドナーになることにより、真相が闇に葬り去られる可能性がある。ここでの「親の同意」がどういうことを意味しているのかという問題。

虐待を受けたこどもを脳死移植のドナーにしない体制づくりの提言 てるてる日記/ウェブリブログ

強い感情で揺すぶられ続けることで起きる「揺さぶられっ子症候群」においては、児童虐待が発覚しにくい。

揺さぶられっ子症候群と児童の虐待

発覚しやすいケースは、それまでの虐待情報や外傷によるものが主。

「揺さぶられっ子症候群」虐待で31歳母親逮捕 兵庫・伊丹市 - MSN産経ニュース

誰が脳死状態の我が子をドナーとして差し出すのか

子どもの「長期脳死」という可能性の問題。そして被虐待児の「親の同意」というさらなる虐待への警鐘。そこで誰が脳死状態の我が子がドナーになることを同意するのか。
脳死による移植をレシピエントとして経験した子どもの家族に「その恩恵と意味を知っているだろう」と暗黙の要求を突きつけられることが今後起こりうるのか否か。そこで被害を受けるのは誰か。

子どもの権利

森岡正博「子どもにもドナーカードによるイエス、ノーの意思表示の道を」(生命学ホームページ)
私は、親の承諾によって脳死の子どもの移植を可能にしようというこの改正案に、反対する。なぜなら、まず第一に子どもの生命は子ども自身のものであって、親のものではないからであり、第二に、十五歳未満の子どもであっても、自分の死に方と死体の処理のされ方について意思表示する能力は備わっていると思うからである。
だから、ある年齢を超えて十五歳未満までの子どもには、ドナーカードをもつことを許可すべきだと私は提言したい。ドナーカードでは、イエスの意思表示だけではなく、ノーの意思表示もできる。そして、ドナーカード脳死判定と臓器摘出の意思表示をしている子どもが脳死になって、家族もそれを拒まないときにかぎって、移植ができるようにすればよいのである。
この考え方が、少数意見であるだろうことは、私もよく承知している。この国では、ただでさえ、親が自分の子どものことを所有物扱いする。子どもを道連れにする親子心中が絶えない国なのだ。「子どもを思う親の気持ち」というものが出てくれば、すべての道理が引っ込む社会である。
子どもが脳死になったとき、親が臓器提供に同意するいちばん大きな理由は、この子が死んでも、この子の臓器が誰か別の人の身体の中で生き続けていってほしいという、藁をもつかむような願いである。親が承諾すれば子どもからの移植ができるようにするという改正案は、このような親の気持ちに強く訴えかけることであろう。
しかしながら、私はあえて、これらの考え方に反対する。自分の生命をどうしたいのかを決めることができるのは、子ども本人のみであり、けっして親ではないし、親の気持ちでもない。自分の生命に関する子ども本人の意思表示というものを、われわれがどこまで尊重できるのかが問われているのである。これは、大人がどこまで本気で、子ども自身の声を聴くことができるのか、という挑戦でもあるのだ。

希望としての心臓再同期療法

乳児の拡張型心筋症に効果 ペースメーカー使う新療法 - 47NEWS(よんななニュース)
長野県立こども病院(同県安曇野市)は3日、心臓移植でしか救命できないケースもある乳幼児の拡張型心筋症の患者に、成人患者に行われているペースメーカー治療を5例実施し、うち4例で退院できるまで回復する治療効果があったと発表した。
同病院は「日本では認められていない小児の心臓移植を回避できる可能性もある」としている。
同病院が行ったのは、心臓再同期療法と呼ばれる方法で、ペースメーカー(縦約3・5センチ、横約4センチ、厚さ約1センチ)を手術で体内に埋め込む。心臓の右心房、右心室、左心室に電気刺激を与えることで、心不全の改善を目指した。
同病院は2004年9月から今年3月、入院時生後2カ月から13カ月の患者5人に実施。うち男児1人が小学校(2年生)に通えるまでに回復するなど4人が退院した。1人は感染症などで死亡した。
同病院循環器科の安河内聡部長は「拡張型心筋症は重症な心不全を起こす病気で、薬で改善しないことが多い。こうした治療法もあることを知ってほしい」と話した。
2009/04/03 20:09 【共同通信