リツエアクベバ

satomies’s diary

別れていく日に向かっていく日々

あのね、ずーっと考えてた。考えて答えが出る話じゃないし、考えた答えなんて現実の前でたいして意味も無い。でもずーっと考えてたんだ。

いつかは裏切る/つくね日記
でもいつか、ぼーずが施設に入所した時、誰も迎えにいかない時が来る。
その日の為にぼーずを施設に慣らしていくわけだ。
それまではずっと何度も何度も何があっても俺が迎えにいくという安心を覚えこませていく。
それは最後の最後で裏切るのが判っていて、だ。

10月31日に行った玉井邦夫氏の講演では。「別れを二度に分ける」と言ってた。「別れを二度に分ける」「いつかは裏切る」。この二つの言葉の差はなんだろうと思う。
「別れを二度に分ける」というのは。子どもの、その子どもにとっての「大人としての精神性」を、知的障害のそのレベルなりにも持つ、と。持つだろう、と。そういった前提のようなところにどこか依存しているところもあるのではないか、とも思う。
実際、親から離れて実にうまくいっているという成人の話も聞く。この子はこんなにも実は育っていたのかと思い知らされたという話も聞く。じゃ、そうでない場合は? そうでない場合の話が見えないとこにあるってことはないのか?とも思う。
わたしは。知的障害をもちながらも自立性の思考が強い娘の、その娘の性格特性を前提に、どこか怖さを感じないでいられるんだ。先に死ぬってこと、何か起きない限り順番として親が先に死ぬってこと。そのことを想定して考えようと思うことができるのは、それは娘の自立性に助けられてるんだ、わたしが。
母親が亡くなって施設で暮らすことになった男の子。帰宅は月に二度の週末。その月に二度のうちの一回が父親の都合で果たせなかったんだそうだ。そうしたら、施設から連絡が来て、その翌週に帰宅ということになったと。「やっぱり帰りたいみたいなんですよね」って。日常の安定は、この月に二度の帰宅ということが前提になっているようだと。「やっぱり帰りたいみたいなんですよね」って、このパパがなんとも言えない表情でそう言った。
「やっぱり帰りたいみたいなんですよね」。それを聞いて、でもわたしは言ったんだ「わたしたち、死ぬんですよね」って。そうなんだよね、死ぬんだよね。子どもに何か起きない限り、先に死ぬんだよね。ここんちのママはそれをどかんと教えてくれたんだ。
だから「別れを二度に分ける」のか、だから「いつかは裏切る」のか。親も子も元気なうちに、最初の別れをやっておくってことなんだろうと思う。ただ、親も子も元気なうちだからこそ、踏ん切りがつかないってことだってあるんじゃないか、とも思う。
娘が三泊四日の修学旅行に行って。で、帰ってきて、すすっといつも自分が家にいるときに座る位置に座り、いつもやっていることをちょこちょこっとやり始めた。その姿を見ながら、(ああこの子はこの子の日常に「帰った」儀式のようだ)って思った。
その、その彼女が自分で想定している「自分の日常の、その日常の定位置と日常に戻る儀式のような行動」を、そういうことをやる「場所」というものをチェンジすることを、親が子どもが家庭がまだまだエネルギーを持っているときにやらなくちゃいけないんだとやっぱり思う。それは「突然のでかい裏切り」を渡さないためかもしれないとも思う。
たださあ、エネルギー要るよなあと思う、手放す準備をしていくのって。育てるエネルギーより手放す準備をしていくエネルギーの方が、ひょっとしたらでかいんじゃないか、とも思う。育てていくのって、そのエネルギーの源を当の子どもがくれたりするからね。でも手放していく準備に必要なエネルギーってのに対しては、子どもには見せられない大人の悩みや悲しみやら、そんなことがからんでいく。そんなの育て始めていくときにはちっともわからなかったわ。
ドキュメント映画の「奈緒ちゃん」。この続編の「ありがとう」では奈緒ちゃんがグループホームへと移っていく。32歳でけして早いわけではない時期で。でも、大人になった以上にでっかい体になった奈緒ちゃんをつぶされそうな状態で膝の上に乗せたりするお父さんが、「いつかは手放さなきゃならないかもしれないけれど、でも今じゃなくてもいいんじゃないか」とぐちゃぐちゃ言うのを、うーんわたしはやっぱもう笑えなくなってるなあとも思う。たった一年とか二年とか前と、ちょっとずつ気持ちは違ってきちゃってるかなあ、と思うのは、「その日」に日々近づいているっていう自分の感覚なんだろうとも思う。娘の10代もあと数年で終わるんだ。
まあひとつわかっていることは。子どもと「別れを二度に分ける」ときに、この一度目の別れには臨界期がありそうだってこと。要は、ここを過ぎるとやっかいなことになりますぜ、って時期が、ぼやぼやしてるとそういう時期が来ちゃいますよ、ってことなんだと思う。ううむ、成人期初期ってのは、なんかホントに難しそうだ。