リツエアクベバ

satomies’s diary

レストランに面接

高三で福祉的就労の現場実習、高二で一部の生徒の職場実習、てなスケジュールで。進路支援の先生に「ちぃちゃんは職場実習に行かせようかと」というお話をいただき(そりゃハードル高いんじゃねーか?)と思ってた。
高等部では中学で学区の中学の障害児学級に在籍していた生徒が通常は入学してくる。でも、娘の学年は高等部での外部入学者はゼロ。その前年度、前々年度に小中高学部に入学者をたくさん受け入れて、学校の教室がほぼパンク状態になっていて、その緩和策として娘の学年は高等部での入学予定者の定員数を一クラス減少させた。結果、内部入学者が全員高等部に入学すれば欠員無しという状態。
てなことで、通常は高等部には「ちょいとできる生徒」が入ってくるんだけど、娘の学年はそこではゼロ。そうなると内部だけの生徒で「ちょいとできる生徒」を無理矢理抽出しようとすれば、娘が該当する、と、そういうからくり。職場実習に行かせる生徒に、ということになったのも、まあそういうからくりではないかと解釈してたんだけど。
ちなみに今年の高一は、入学のための説明会と学校体験の日に「待合室でハリーポッターを読んでいる子がいた」と周囲はどよめいてた。今年の高三は、携帯のミュージックプレイヤー機能を上手に操り、わたしとBUMPについて語れる生徒がいる。要は娘の学年にはそういう子がいないってこと。
さてさて、この職場実習。完全な「職場」ではなく、いわゆる福祉ショップのレストランが候補にあがった。「行かせようか」という話だったんだけど、結局は「親が決定すること」と言われてふうむと悩んだ。
(ハードル高いよなあ、挫折経験になったらかわいそうだよなあ)と思いつつ、わたしがイエスかノーか答えることで娘の経験が左右されることになると。そこで「飛ぶべき」と判断し、イエスと返事。断るのは簡単だけれど、経験の機会は望むだけで手に入るわけではない。ここでイエスを出さなければ、娘にこの経験の機会は二度とやってはこないだろうというのが決定打になった。
なんてとこで、GOサインが出たので昨日進路支援の先生と担任の先生と娘とわたしとで福祉ショップのレストランに出向く。
地域作業所等の見学を重ねてきた娘は、「けんがく」という言葉に反応する。レストランに着くと、夏休みに客として連れていった時とは視線が違う。何も言わなくても食い入るようにカウンターや厨房を見つめ続ける。
ふと、側を通るダウン症のウェイトレスに「こんにちは」と声をかける。以前見学に行ったときにもそうだったけれど、娘はダウン症のちょいと自分より年上の女の子に反応する。それがたまたまなのかわかってやってるのか、娘の言語能力では確かめる術は無し。
午後のピークを過ぎ、客がいなくなったのを見計らって進路支援の先生がトレイを持ってきて娘にお冷やの入ったコップを運ばせる。コップが動かない仕様のトレイだけれど、娘はへっぴり腰でこわごわと歩く。手のひらを広げてコップの口のところをがばっとつかんで持って、何人もの人から一斉に「コップは横で持つ!」と注意が飛ぶ。それを何度もやらされ、ヒーヒーと声が出る。三度目に成功。成功体験というより、表情に戸惑いがにじむ。
「本人に問題無し、二月に一週間実習」ということになった。ふむ。担任の先生が進路支援の先生に「学校でちょっとコップの持ち方を練習させようと思います」と。
「いえいえ先生、ちょいと今日、ウチでやりますわ」とワタクシ。ヒーヒーという感じがちょいと気になっていて。突然の「やらされ」で、本人にちょいと挫折経験という感じが気になっていて。これは早めに成功体験にスライドさせた方がよさそうか、と。ここでの実習で進路先につなげていくとかそういうことではなく、実習は実習で経験で。ただその経験自体を本人に自信を失わせることにはさせたくないな、と。でもって、それには今日の体験を時間差を最小限にして、成功体験につなげることがよさそうだな、と。それは「いきなりやらせる」んではなく、家でラクな状態でやらせたらすぐにできることだな、と判断したから。
ってことで、帰路、とっとと業務用の食器を売ってる店に寄る。個人でも買えるところ。全く同じ製品のトレイとコップを入手。
夕食のときに、冷えたウーロン茶を入れたコップを運ばせる。「コップはこうやって持つよ」。ははは、一発で成功。本人やたらにうれしそう。そのまんま、できた料理を全部娘に「トレイを使って」運ばせる。すごい!全部きれいに上手に配膳。本人もだんだん慣れてきて、今日へっぴり腰だったのは誰?みたいな感じ。
突然何を始めるんだか、と、息子がものすごく心配そうに見つめる。おい、オメーは孫を見守るおばあちゃんかなんかかよ、みたいな。
トレイを食卓において、そこから丁寧に配膳しながら、娘はこの「即席おばあちゃん」ににっこり。よし!成功体験にスライド、成功!ってかーちゃん大喜び。
朝、朝食の準備をしていると娘はトレイを持ってやってくる。「自分にできるお手伝いが家の中で発掘された」という感じ。なるほど、飽きるまでやらせてあげるよ。やっぱり経験の機会って大きいんだな。