リツエアクベバ

satomies’s diary

さよならセレナと、こんにちはキューブキュービック

さよならセレナ

おかあさんは今夜、ドライブに行くんだ。セレナで走った道を通りながら、セレナにありがとうとさよならをするんだ。なんてことを土曜の日中言っていて。息子がどうも興味深そうな顔で見ているので「連れていかないよ」と宣言する。「なんで?」と聞くので、ひとりで行きたいしアンタはわたしがなんか考えてたり泣きそうになったりするとそうっと顔をのぞくじゃないか。アレがイヤ。だから連れて行かない。一人でひたるんだよ〜だ。などと。
娘に歯磨きをしてやって、じゃあおやすみと。それから「行ってきます」。ごそごそと取り出したCDはコレじゃ。理由は子どもたちが小さい頃によくかけていたCDだったから。特に娘がお気に入りで、コレをかけろと要求することが多く、もう飽きたよ〜替えさせてよ〜、と悲鳴を上げてチェンジをお願いしたもの。


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エンジンかけてまず息子が通った幼稚園に行く。日常通る道ではあるのだけれど、こうやって走っていると、あら不思議、幼稚園のスモックを着た幼稚園児の頃の息子の映像が頭を駆け抜けていく。
それから小学校。自宅から遠い立地で、徒歩を基本とはいうものの、暑いだ寒いだ体調が悪いだ悪天候だなんだかんだと娘の送迎に車をよく使ってた。娘が通った障害児学級の教室が見える場所で一度車を停める。就学に緊張したりなんだかんだなんだかんだと、たくさんあったなあと思いながら教室を眺める。
次に入院経験のある病院、それから耳鼻科、眼科、区役所、プールのある公園、公的施設を回り。ガソリンに余裕が無くなってきたので、セルフのスタンドに行く。それから駅。真っ暗な道、でっかい声でセレナに話しかけながら。ここ行ったね、ここに連れてきてくれたね、ありがとうね。
家に帰る。エンジンを切る。なんだかんだとつけた付属品をはずしていく。オーディオのオートチェンジャーに入れた10枚のCDを取り出す。玄関の戸を開ける。夫が言う「ちゃんとお別れができたかな」。この一言で何かが崩れていくように、どばっと涙。
日曜の朝、部活に出かけていく息子に「帰ってきたら車替わってるからね。セレナにばいばいしなさいね」。わたしを見てふっと笑ってから、セレナに手を振って出かけていく。車内を再度清掃。ファブリーズをしゅしゅっと。さあ本当にお別れだ。

こんにちはキューブキュービック

車屋さんから「今から行きます」と電話アリ。駐車場に入れられるようにセレナを出す。セレナの進行方向に見える景色は、キューブキュービックが来る道。あ、曲がってきた。あ、アレだ。第一印象「赤いキューブキュービック、かわいい!」。今までどこかの駐車場で見かけた赤いキューブキュービックより、道ですれちがった赤いキューブキュービックより全然かわいい。なんだろう、この感覚は。ああわたし喜んでいるんだなあ。
駐車場に停めてもらう。ナンバープレートを見ながら手をたたいて喜ぶ。書類で確認して歓声を上げた偶然を実際に確認する「きゃ〜」。要するにナンバープレートに記載されている数字がものすごく気に入ってるわけで。「ナンバー希望しますか?」と聞かれて、いや偶然がいいと答えたのだけれど。ここまで偶然がラッキーに傾くとは思わなかった。
車の説明やらオプションの説明やら書類にサインやらなんだかんだを終えて。車屋さんがセレナに乗り込む。なんとなく助手席のドアを開けて、もう一度車内を見たり。走っていくセレナを見えなくなるまで見送る。振り向けば駐車場には赤いキューブキュービック。こんにちは。今日から仲良くしてね。