リツエアクベバ

satomies’s diary

大学生の麻疹流行

 ある一時期、家の中に乳幼児がいた家庭の何割かは(ああ…)と思ってると思う、大学生の麻疹流行。
 ’91年の秋に生まれた娘は’92年の5月過ぎまで病院を出られなかった。退院時に「予防接種を受けることに問題は無い状態なので、これから順に受けてください」と言われる。接種時に証明となる「この子は現在予防接種に問題がありません」という書類をもらい、母子手帳に貼り付けておくように言われる。貼り付けておかないと、接種の度に証明として取られてしまい、その度に同じ書類が必要になってくるかもしれないからと、主治医が言う。
 最初に受けたのがツベルクリン。’92年の夏頃。小難しい顔で娘を見る集団接種の会場の医師に、主治医に言われたように母子手帳に貼り付けた書類を見せる、そして接種。
 次々に、予防接種の案内と集団接種のスケジュールのお知らせが郵送で来る。どうしよう…、と思う。どうしよう、どうしたらいいんだろう、受けさせるべきかやめるべきか。でも主治医が弱い子だからこそ、予防接種は積極的にと言っていたなあと。でもこの予防接種は怖い、できたら受けたくはない、どうしよう…。
 ああよかったと思ったのは’93年の春。受けなくてよくなったこの不安を抱える予防接種。その予防接種の名前は「新三種混合(MMR)」。おたふく風邪と風疹と麻疹の混合が、麻疹単独ワクチンになった。晴れて受けなくてよくなったことにほっとした。麻疹単独ワクチンを接種。
 予防接種が義務ではなく、任意になる。その説明の冊子が役所から送られてくる。接種のスケジュールが本格的になる頃、そんな状況になった。
 でも…。うちの娘の少し上の世代は、可能性はそんなに高くはないとはいえ、予防接種はロシアンルーレットと認識した人は存在するというイメージがある。MMRが消え、予防接種が任意になった頃、小児科には「はしかは死に至ることがある病気」「はしか単独ワクチンの予防接種を受けましょう」というポスターがあったことをよく覚えているなあと思う。

 「これまでかかった病気の中で、一番辛かった」と、東京都葛飾区の大学2年、蒔田直哉さん(19)は振り返る。4月28日夜から頭が痛くなり、翌朝の熱は39.2度。受診すると「風邪」と診断された。2日ほどで熱が下がったが今月2日、再び熱が39.5度に。全身に発疹が現れ、せき、のどの痛みなどの症状が出た。発熱は1週間続いた。典型的なはしかの症状だが、予防接種は受けていなかった
(はしか:若者に感染拡大 予防接種敬遠の世代)

 「予防接種は受けていなかった。」という一文。なんで?って簡単には言われたくないなあと思う。予防接種後の後遺症の可能性を怖がった人が存在する世代だからだよ、と思う。死亡例がある予防接種を怖がる人がいることは責められない。義務接種の中でMMRを拒否した人で、麻疹単独になったときに改めて接種に行かなかった人もいるんではないかとも思う。
 この予防接種を怖がった、その親の世代。この親は「筋短縮症」を知っている人がいる可能性がある世代だと思う。

筋短縮症とは
 注射のさいの物理的刺激と薬剤による筋肉組織の破壊によって外形の変化や運動機能に障害がもたらされる医療被害。1973年に山梨県での集団発生で問題化した。
 注射された場所によって、大腿四頭筋短縮(拘縮)症(太もも)、三角筋短縮症(肩)、上腕三頭筋短縮症(腕)、殿筋短縮症(尻)などの種類がある。
 風邪などで来院した子どもに効果あるいは必要のない抗生物質や解熱剤を頻繁に注射したことが原因であり、製薬企業と医師の人権を無視した姿勢が底流にある。
 1973年に福島県で最初の提訴、以後東京地裁名古屋地裁などで提訴が続く。
筋短縮症事件/薬害資料館

 風邪を引くとさ、小児科に行くと注射だった。後ろ向きに寝かされて太ももや尻に注射を打たれる。熱が出ると注射だ…って感じだったなあと思う。いつ頃からだっただろう、風邪を引いて熱が出ても注射を打たれなくなったのは。
 小学校のときに筋短縮症の同級生がいた。走るときにかたんかたんと足がうまく曲がらない。小学生の間に何度も何度も手術を受けていた記憶がある。両足の膝から腿の部分に大きな手術痕があった。成長に沿ってしなければならない手術があるのだと、子どもなりにわからないなりに聞いた記憶がある。
 ちょっと上の世代には、サリドマイドの被害児がいる。サリドマイドを含む薬剤を、つわり防止のために処方された妊婦たち。そして生まれた障害のある子どもたち。こうしたニュースを日常的に報道で見ていた世代。報道で見ていたといえば、森永ヒ素ミルクの事件もあった。
 子どものためによかれとすること、それをむやみに鵜呑みにしては危ない、という刷り込みが、気持ちのどこかに巣くっているような感じがする。それは。被害にあった方々のくやしさを感じていたいということなのかもしれない。自分とは関係ないとして、存在しないもののようにしてしまうことに対しての、せめてもの抵抗なのかもしれない。自分だって、たまたま気づかずにすり抜けた危険があったんではないか、とも思う。
S:BOOKMARK / 2007年05月27日

2008.2/24 追記

このエントリに「筋短縮症」と検索されてのアクセスが続いているようです。
当事者でいらっしゃる如月はじめさんから以下のコメントをいただきました。エントリ部でもご紹介しておきます。

ブログかHPの開設はしばらく見合わせる予定です。
もちろん開設すればすぐにお知らせしますがそれまでの間、satomiesさんのこのブログには検索で訪れる方が多いようですので私のメールフォームを貼らせて頂きます。必要であればお使いください。

筋短縮症を患ってらっしゃりお悩みなどを抱えられてる方も日本国中には多くいらっしゃると思います。私もまだまだしらないことばかりでお悩みを一手に引き受けることはできませんが、お話を聞いたりすることはできますし何か良い解決策など共に考えられるかもしれないので良かったらメールフォームをお使いください。
http://form1.fc2.com/form/?id=266984

如月はじめさんのコメントから引用させていただきました。コメント全文や、如月さんのこれ以外のコメントに関しましては、下記コメント欄にてご確認ください)。