リツエアクベバ

satomies’s diary

幼さの残る「いじめ」の思い出ふたつ

 ひとつは自分のこと。小学校の6年生のときに、わたしが好きだった男の子に教えてもらったこと。男の子の集団で「○○無視しようぜ」という流れがすでに始まっていること。そしてその男の子はすでに孤立が始まっているということ。その集団に加わっていないのは、その、わたしが好きだった男の子ともう一人だということ。
 なんて卑怯な、と思った。ふむ、と思った。んで、翌日からわたしはこの、孤立した男の子にべたべたべたべたとまとわりついた。ねえ、ねえ、ねえ、ねえ。
 男の子たちはなんだかんだと冷やかしはしたが、そんなことは想定の範囲内で、はっきり言ってどうでもよかった。「○○無視しようぜ」の首謀者は集団のペースメーカーであったけれど、わたしはわたしでそれなりに集団のペースメーカーではあったので、集団に左右されるタイプの子どもたちはうろうろし始めた。
 そんなことより、ねえねえねえ、とまとわりつきつつ、その男の子と会話する時間はそれはそれで楽しかった。その子は孤立しているから時間はたくさんあり、その男の子が好きなこと、好きなもの、興味のあるものの話をたくさん聞くのは楽しかった。その男の子はリコーダーがとても上手で、高音の音色が特にとてもステキだった。わたしは何度もリクエストをし、間近でたった一人でその聴衆になることがとても楽しかった。
 楽しそうにしているので、そこに加わる人間は少しずつ増えて、そのうち無視の流れは消えてしまった。
 もうひとつは息子のこと、3年生の頃。見るからにアトピーがひどい女の子がいた。わたしはその女の子の背景はよく知らなかった。知っていたのはその女の子がよく一人でウチに遊びに来て、息子と二人で楽しそうに遊んでいたことだけ。
 ある日プールに行ったときに、たまたま同級生と会った。なんだかんだいっしょに遊んでいる中で、耳にする。その同級生が息子に、その女の子を無視するように吹き込んでいる。息子は曖昧な返事を返し、わたしはその流れに唖然とした。
 その女の子の近所の人に、その女の子のことを聞く。家庭は複雑で父親の不在は多く、母親は夜遅くまで帰宅しない。兄と彼女と二人で留守番をする機会は多く、この兄は見ていられないほどこの女の子につらくあたる。しかしこの女の子が同情されないのは、この女の子は大人の目を盗んで、近所の小さい子に暴力をふるっているのだとか。
 は〜、と思う。思うけれど、この女の子がウチに遊びにくるときはとても平和で、二人はとてもきゃらきゃらと楽しそうに遊ぶ。ただけして家の外には出ようとはしない。ゲームをしたり、二人で自作のすごろくを作ったりして、家の中で遊び続ける。
 そのうち、この二人は、自分たちだけの秘密があるんだ、と言う。秘密だから教えられない、と言う。まあまあ、なんてことを言いながら、秘密をもつこと自体が楽しそうなのでうふふと思う。
 ある日、その秘密の内容を知る。その女の子は突然転居し、転校し、いなくなった。息子のノートの一番最後の片隅に、その秘密が書かれていた。その女の子の名前が書いてあり、その名字は知らない名前になっていた。