リツエアクベバ

satomies’s diary

過去の文章

 8月24日に「ブラックジャックによろしく」の第三巻と第四巻のリンクなんぞ入れまして、再度この二冊を読み直したりしています。
 んで、発売当時に自分がネット上に入れた文章なんぞも読み直し。一部修正なんぞしつつ、公開。

 コミック誌のモーニングに連載されている「ブラックジャックによろしく」。いよいよ、待望の第四巻が発売されました。
 4年間の不妊治療の末、双子を出産。その双子が未熟児で、障害を残す危険があるため、面会をしようとしない夫婦。少しずつ、両親の受け入れを待とうとする医師達。そこで、さらに、双子の弟はダウン症だと判明。しかも、早急に手術をしなければ、命の危険がある。しかし、両親は手術の承諾書にサインすることを断固とした姿勢で拒否を続ける。
 まあ、こんなストーリーだったのですが。
 ちょっと不自然だったのが、生後すぐに医師たちがダウン症を疑わなかったこと。これは、医療の現場として不自然なことなのですけどね。
 ってことで、読んでいるこちらは、最初は「障害が残る可能性がある未熟児が生まれ、衝撃を受けている夫婦の話」として解釈。
 そこで、出現してきた「生まれた子はダウン症だった」展開。来たな〜〜〜〜と、正直、思いました。ここへ来るか、このストーリーはと。
 しかし、ダウン症、「世の中捨てたモンじゃないわよ」的ストーリーでの登場ばかりの昨今。ほっほっほ、まともに来たわねと思いました。こうしたモノにぎゃんぎゃんと抗議するダウン症の親、こえ〜〜だろうなあなんて、ちょっと思いながら、「歯に衣着せぬ」という感じでの取り上げ方に、わたし自身は、かなりワクワクして読んでました。
 これはすごいと思った週の分は、文字の部分だけ、入力して取っておきました。弁護士である、生まれた子どもの父親のところに手術の承諾を取りたい医師が会いに行っているシーンです*1
 このストーリーが掲載された週に、この漫画のこのシーンに関して、ダウン症児のママになりたての方にお手紙をいただきました。わたしも彼女も、この漫画のストーリーのその後の展開を知らない状態の中での対話だった。
 この週に出てくる描写に絶望している彼女。その絶望にヘルプを求めてきた彼女。それに対してお渡しした答えですが。
 「わからないことはたくさんある」
 「でも、『好き』ってことが、大事なことなんだと思うよ」
 このストーリーの週も、ラストで、父親は、自分の「好き」を、どう扱っていいのか、震えています。
 この「第四巻」。手術を待つ瀕死のダウン症児の「弟」を前にして、双子の会話がイメージで交わされています。健常児の未熟児として生まれた方の「兄」は、「弟に命をゆずる」と言い残し、容態が急変して死んでいきます。
 そして、結局は、夫婦は、いろいろな展開の中で、自分たち自身の「好き」を見つけ、取りもどします。それは、もともと、彼らが持っていた「好き」で、ただ、大きな衝撃を前にして、見えにくくなっていただけだったのではないかと。
 実におもしろい展開でした。久々にコミック誌の単行本、買おうと思っています。(2003年1月27日)

 いや〜、残しておくもんだね、と思った。再読の感想は、展開を知っている上で読んでいるってとこで、連載で「おお」とか思ったリアルタイムの感覚とはまた違う。最初っから周囲の登場人物の反応なんてのを検証してしまうやらしさ、なんてのが読み方に入ってきてますね。まあこの言葉違うだろ、なんてツッコミなんてのも入る。主人公の行動に対しての医療の現場からのツッコミなんてのも理解できる。でもそうしたツッコミを超えて、作品が伝えたかったこと。なんてのを読み取ろうとする自分。展開に対しての情報が全く無かった状態での自分の感想って、自分でも貴重だなと、自分の残したものを再読して思いました。
 ここで使った「好き」には「大切」って意味もあるよな、と。そんなことを過去の自分の文章を再読して思った。そういや最近の週刊モーニングのある漫画の中で、I Love Youの最初の日本語訳は「大切」だった、なんてことも書かれていたな、と思いました。
 漫画自体を再読して思ったこと、もうひとつ。第四巻の最終章の父親の言葉。「正しい答えがなんなのかわからなくなった」「しかし考え続けることが答えなんだと思った」。これに答える医師の言葉が「私はあなたの事を一生考え続ける」というもの。そうだよね、人生の途中の言葉に正解なんて位置付けはできないし、それはそう、それが答えなんだと思う。それは初見時よりも自分に入ってくることを感じたな、なんて思った。
 ま、ドラマにもなったし今さら感はあるが、名著だと思いますのでね、しつこくリンク入れときます。

ブラックジャックによろしく (3)
ブラックジャックによろしく (4)

*1:(第四巻第28話「共犯者たち」)