リツエアクベバ

satomies’s diary

1月22日の追記

 中一だったか中二だったかのある夜、姉がわたしの部屋に来る。なんだかんだとつまらないことを言いつつ、ずるずると居座る。どうもね、わたしは家の中のプライベート空間というものが大事なモンで、こういうずるずるとなんだかんだというのがめんどくさい。ただ、なんだかずるずると言いたいことがあるんだかないんだかという感じで、ベッドで漫画なんぞ読む姉を見ながら(なんかあったな…)と思い、言い出すまで放置。ちなみに姉は漫画は好きじゃない。
「あのね…」
 ほらなんかあったと思いつつ、無関心を装いつつ、聞く。その日学校で、なんだかトラブルがあったらしい。1人の同級生に対して、なんだかかんだかの数人が取り囲んで文句を言ったらしい。
 その原因だか理由だかのストーリーはさっぱり覚えてない。確かにその「1人」には、まあ積み重ねたそれだけの理由が無いこともないのだなと思ったのは覚えてる。しかし、それはそれで、姉はその同級生に与えたダメージというものを気に病んでいるわけだ。
 姉はこういう場面で集団のリーダーにはならないタイプ。ペースメーカーになるヤツの言い分なんぞを理解しつつ、そういう展開になったことに、姉自身がダメージなんてのを受けたのか、その辺もよく覚えてない。なんだかぐちゃぐちゃと、話が行ったり来たりする。
「電話しなよ」「簡単なことだ」と言う。何を話せばいいのか、と、姉が聞く。だってあの展開はこうでああで、今さら何を言えばいいのか、と、姉が聞く。
「いや、そんな話はしなくていいよ。気になるんでしょ?じゃ電話しなよ。今日電話しないと、今電話しないと、おねえちゃんが彼女のことを気にしている、心配しているなんてことは、ずっとずっと伝わらないよ」と言う。
 だって何を話せばいいのかわからない、どうしていいかわからない、と言うので「テレビの話でもしてろ」と言う。とにかく電話してごらん、と答える。
 悶々と時間を重ねる姉を部屋から追い出す。廊下にある電話の受話器を取る音がする(携帯なんぞも子機なんぞも無い時代)。
 なんだか鼻声で、今にもしゃくり上げそうな勢いと、それを隠し通そうとする無駄な努力で、必死に今日、ろくに見てもいなかった歌番組の話なんぞをしてる。笑っちゃいけないが、なんだか笑いそうになる。頑張ってるな、と思う。
 その時の相手、今でもずっと友達。オーストラリアに住む姉が、帰国する度に必ず会ってる、仲のいい友達。姉の口からこの彼女の名前が出るたびに、わたしはあの夜のことを思い出す。姉には「姉」のプライドがあるので、あの夜の話をあの夜以後、わたしにはしたことが無い。