20代になりたての頃だったと思う、9時過ぎの下北沢の書店にて、ちらちらちらちらと視線を投げてくる美少年。中学生くらいだったと思う。いや、高校生になりたてくらい?(忘れた)。なんだコイツとちらっと見つつ、あまりの美形に驚く。この男の子、きれい。少女漫画に出てきそうなキャラ。背が低めで、ちょっと中性的な雰囲気かな。
書店を出る。自宅まで徒歩20分程度。駅をちょっとはずれると人気の無い住宅街。ふと気づくと先ほどの美少年が自転車で同じ道に。人気全く無し。
件の美少年、自転車でゆっくりゆっくり進む。電信柱を2〜3ごとにそこで止まり、わたしが追いつくのを待ってる。ずっとそのまま同行。そのうちわたしを待つときに振り返って見ている。
なんなんだよ、この子…。
家までついてこられても困るので、家が近くなりそうな頃に声をかける。
「なんか用?」
どきっとしたような顔が、また鑑賞に価するんだコレが。きれいだなあこの子、と思う。
どきっとしたような顔が、また、なんだか深刻な顔になる。ああ、なんかそれなりの用事があったのか、と、聞こうかなという気になる。
男の子:「実は…」
わたし:「ん?」
男の子:「お願いがあるんだけど」
わたし:「なあに?(聞いてやらんこともないぞ?)」
男の子:「見て欲しいものがあるんです」
わたし:(なんだろ、と、ちょっと身を乗り出す)
この男の子、おもむろに、自分の股間のチャックに手をやりました。
わたし:「ちょ、ちょ、ちょっと、ストップ!」
何やってんのよ、アンタ。そんなことやって、はいはいなんて聞けるわけないでしょ。何やってんのよ、全く。
それからの展開、コトの展開の詳細は忘れた。ただ、わたしたちは道ばたに座って話し込んでた。アンタはこんなにきれいな容貌に恵まれていて、なんでそれが生かせないんだ。こんなことやってちゃダメじゃないか。「容貌に恵まれている」ということがワードとして入っていたことは、そうねえ、嫉妬も影響していると思う。だって、すごくきれいなんだもの、この子。間近で見ながら「きれいだなあ」って思ったことは記憶に強い。茶色がかった軽くウェーブする髪、色白の肌、長い睫毛、きれいな目と通った鼻筋。憂いを浮かべる瞳の美しさよ。ああこの憂いがこんなネタじゃなかったら良かったのに…。
この子の話なんぞ、延々と聞く。「じゃあね」と手を振って別れる。その後、この子に再会することはありませんでした。