リツエアクベバ

satomies’s diary

姑の入院

 都内に住む長女、スープの冷めぬ距離に住む長男、未婚で同居の次女、九州に嫁いだ三女。これが姑の子どもたち。長女が23日に、そして今日、九州から義妹が駆けつける。
 実子の前の「嫁」というのは、どこか「正妻の前の妾」みたいだ。九州から駆けつけた義妹の前で、一歩引いて立つ自分。いや、それが一番いいことだと思うから。ただ、帰るときに義妹の前に出て姑の手を握ってしまう。
 入院して、容態がなかなか上向きにならなくなってから、姑は手を握られることを心待ちにするようになった。笑顔でいても心細いのだと思う。何を言うより何を話すより、手を握っている方がわたしは安心する。手のぬくもりはたくさんの言葉より、時に饒舌だと思う。義妹の前に出るつもりはなかったんだけど、でも一度も手を握らずに帰ることができなかったのよね。
 姑が泣く。我慢できずに義妹が泣く。わたしはそっと席をはずす。やっぱりここは「正妻」だろう。
 「正妻」の前では遠慮があって、なんとなく、むくんだ足をさすってもやれない。前に出て手を握ったりするのもちょっと遠慮がある。でもそれもまた、立場上、抑えた方がいいとこなんだろうと思う。
 遠方に嫁ぐのは、母も子も心細いことなんだろう。でも、すぐに駆けつけられたりしょっちゅう帰省できたりする経済がある相手と結婚するのも、親孝行なんだろうな。