リツエアクベバ

satomies’s diary

「どう?」

 ここのところ、朝の気温が冷えてきた。真冬よりもこの時期の方が体の冷えは体調に敏感に影響する。体調を崩すと快復に長引く娘の服装には、少し気を使う。
 本人わかってるのかわかってないのか、毎朝「スカート?ズボン?」と聞くと、即答で「ずぼん」と答える。「スカート」と答えれば、厚手のハイソックスなど出してやろうなどと思いながら、(そうかズボンか)と安心する。
 学校から帰宅すると、なぜか毎日必ずスカートに着替える。ごそごそと時間を使い、自分でコーディネイトをして、かっこつけて自室から出てきて、高飛車な表情で聞く。
「どう?」
 はいはい、すてきすてきと答えながら、「でもこっちの方がステキよ」と、色合わせのコツなどを伝授する。10代の女の子としてまあまあの線にしてやるために、町に出るとこの年齢の女の子の服装などをちらちらちらちらとチェックするのが習慣になってしまった。知的な障害があるために自分で収集する情報に限界があるだろうから、それを補ってやらなければと思うと、こんなことまで関係してくる。本屋で10代の女の子の購読雑誌などをちらちらと眺めつつ、こんなに突飛な服装ではなく、ちょっとオシャレ程度の本はないのかと真面目に思う。
 先日、障害児余暇支援事業の場で、ボラで来ていた1人の高校生のそばを離れなかったそうで。娘の目的は、彼女の服装チェック。どれどれとその女の子の服装をわたしもチェックしにいくと、デザインの凝った細身のジーンズと、体にぴったりとした短めのシャツ。
 う〜〜ん、アンタは背が低くて身長の割にはケツがでかいんだから、この手のジーンズはサイズが難しいのだよ、と思いつつ、それを理解させるために伝える術もなく困ってしまう。要するに小学校の中学年程度の身長で、女性としての成熟が体に現れているのだから、洋服のサイズを選ぶのにもとても困る。たまに背の低いオシャレな成人女性がいると「洋服はどこで買いますか?」と聞きたくなる欲をぐっと抑える。
 背の伸びが芳しくないのに、成長期としての食欲は日に日に増していく。抽象的概念での思考が難しい知的な障害を持った子に、体形を作っていく体操なんぞを教えようとしても、多分わけがわからんだろう。ダイエットすら、経過と結果の先読みが多分困難。太る前に太らせないようにする努力の必要性を日々認識。
 おととい、入浴前に、しげしげと服を脱いだ自分の体を鏡に映している様を目撃。わたしを振り返り、娘は一言。「どう?」
 はいはい、すてきすてきと答えながら、本当はもうちょっとウエストラインをなんとかしようよと思う。具体物での解釈と理解が一番手がかりになるこの子の知的な障害を現実にして、それでも女の子として「はいはい、すてきすてき」を全くの嘘にしないためには、あるひとつの決意が必要になる。この子の一番身近にいる「女」である母は、ウエストのくびれを絶対に維持させ続けなければ、と。まあ、がんばりますです、はい。